· 

FTX、日本で返金難航も 出金システム利用停止 金融庁、監視体制を強化

暗号資産(仮想通貨)交換業大手のFTXトレーディングが経営破綻したことで、同社グループに資産を預けていた顧客は資金回収が難航する可能性が強まってきた。日本法人のシステムは停止しており、資金を引き出せない投資家が続出。不正な資金引き出しも発生するなど資産保全は一筋縄ではいかない。

 

日本法人FTXジャパンは14日未明、資産の管理や自社の財務数値をホームページで公表した。自社保有の現金は10日時点で196億円、9月末の純資産は約100億円と資産超過の状態。1兆円超の負債を抱え債務超過のFTX本体との違いを強調した。

FTXジャパンは日本の資金決済法に基づく仮想通貨交換業者のため、顧客からの預かり資産については分別管理義務がある。顧客から預かった仮想通貨はインターネットに接続しない「コールドウォレット」で、法定通貨は日本の信託口座で分別管理している。

 

■顧客は数万人

 

日本当局の対応は早く、金融庁は10日深夜に金融商品取引法に基づく資産保全命令をFTXジャパンに発動。松野博一官房長官は14日の記者会見で「資産の保全など利用者保護に万全の措置を講じるよう行政処分を行った」と語った。

教訓は2018年1月に大手仮想通貨交換業者コインチェックが約580億円の不正資金を流出させた事件だ。金融庁は仮想通貨交換業者に一斉に検査に入りセキュリティーなど不備を改めさせる業務改善命令を発動した。

FTXジャパンの顧客は数万人。今回は本国の指導下で勝手に出金サービスを停止したことなどが資産保全命令につながった。命令後も一度は再開したシステムが再び停止しており、出金サービスを利用できない顧客が続出。金融庁は監視体制を強めている。

法律上、顧客の資産は分別管理されているが、資産を回収できるか懸念が広がっている。

FTXの資産保全の穴が見つかったからだ。ハッキングによる不正な資金引き出しがあった。ブロックチェーン(分散型台帳)企業エリプティックは4.7億ドルの引き出しがあったと分析する。

FTXの米事業の法律顧問のライン・ミラー氏は13日、ツイッターに「FTXの事業体ごとに保管する資産を統合する過程で、異常な動きがあり調査している」と投稿した。FTX内部犯との見方も浮上する。

 

■破産法、焦点に

 

不安要因になりそうなのが破産法制だ。FTXが11日に米国の裁判所に申し立てた米連邦破産法11条(チャプター11)の申請書には日本法人も含まれる。米国の破産管財人が資産を管理し処分を決めることになるが、日本国内の資産管理権がどちらにあるのか現時点ではあいまいな部分がある。

日本の法人が関連した倒産が海外で発生した場合、海外の倒産法が日本国内で自動的に効力を持つことはない。破産管財人が「外国倒産手続きの承認援助法」に基づき日本の裁判所に申請し裁判所が承認すれば、効力が発生する。管財人が日本の資産を管理下に置くことをはっきりさせたり、不当に海外流出したりする恐れがあれば、強制執行を禁止する命令を出せる。日米間で係争に発展する可能性がある。

日本人の資産がどこで管理されているか不透明な面もある。「仮に米国法人が破綻した場合、日本の顧客が米国法人に償還請求可能かどうか定かではない」(金融庁)

さらに「FTX本体が販売に絡む一部のトークンでは、日本国内の資産管理権がどちらにあるのか、現時点ではあいまいな部分がある」(大手法律事務所の弁護士)との指摘もある。

投資家の間では伏魔殿のようなFTXを前に、怒りと諦めの声が混ざりあっている。

(フィンテックエディター 関口慶太、金融エディター 玉木淳)