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みずほ証券や三菱UFJモルガン、富裕層にプロ向け投信

日本の証券会社が富裕層にプロ投資家向けの商品を提供する。みずほ証券は米債券運用大手ピムコと組み「プライベートクレジット(非公開融資)」のファンドを販売し、三菱UFJモルガン・スタンレー証券はプロ向け商品を小口化して個人に販売を始めた。物価上昇と低金利継続で現預金の価値が目減りするなかで、富裕層マネーの受け皿となる商品を探る動きが活発になってきた。

みずほ証券は今年夏ごろからピムコのプライベートクレジットファンドを個人投資家にも提案したところ、150億円弱の販売につながった。最低投資金額は1億円。非公開市場の相対的に高い利回りが期待できる一方で、社債や不動産担保証券などの投資先を機動的に入れ替えることでリスクも分散する。

世界的な景気後退懸念で株式などリスク資産に資金を振り向けにくくなっており、債券に関心を示す富裕層の顧客も多いと判断した。みずほ証券の担当者は「顧客の約8割が新規でキャッシュから購入している」と話す。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券は2021年度、一般に機関投資家向けとされるプライベートエクイティ(PE)ファンドなどに1億円程度から投資できる仕組みを始めた。米資産運用最大手ブラックロックのインフラファンドなどで残高を増やし、富裕層と法人への販売額は10月末までに計1000億円に達した。米大手投資会社ブラックストーンは野村ホールディングスと組み、日本の個人に公募型の非上場REIT(不動産投資信託)をこれまでに約500億円販売した。

PEやその債券版のプライベートクレジットなどのオルタナティブ(代替)資産を扱ったファンドは一般に最低投資金額が高く設定され、流動性も低い。1口数十億円規模の投資が可能な保険会社などの機関投資家向けの商品とされてきたが、最近では小口化などで販売先の間口が広がってきた。

大和証券は今春、ベンチャーキャピタル(VC)を通じて日米のスタートアップに投資する公募型の投信を富裕層向けに販売を始めた。過去には同様のファンドを機関投資家向けの私募型として募集していた。SMBC日興証券も未上場株を含む公募投信を個人の富裕層が投資しやすい最低金額で設定するなど注力してきた。

仏コンサルティング会社キャップジェミニの22年の調査では、日本の富裕層の資産のうち現預金は34%で、全世界(24%)より高かった。野村総合研究所の19年の推計によれば、日本では130万世帯超が1億円以上の金融資産を持つ。個人金融資産約2000兆円の過半を現預金が占める国民全体に比べれば代替投資などに積極的だが、利回り型商品に資金を振り向ける余力は大きい。

富裕層向けの営業を強化して預かり資産残高を増やしたい証券会社の狙いと、日本に眠る現預金に魅力を感じた海外勢の思惑が重なる。一般の個人より投資リテラシーが高いといわれる富裕層だが、投資額が大きく上場株などと比べて透明性の低い未公開資産の商品ではとりわけ丁寧な説明が求められる。

(五艘志織)