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孤高の家電量販店「ヨドバシ」、西武池袋に出店の必然

JR秋葉原駅などの駅前で大型店を営業する(東京都千代田区)

セブン&アイ・ホールディングスから米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループへの売却が決まったそごう・西武。フォートレスと連携し、西武池袋本店(東京・豊島)などへの出店を検討しているのが、家電量販店大手のヨドバシホールディングスだ。業界再編には距離を置き、自前出店で事業を拡大。傘下のヨドバシカメラの売上高は約7500億円と業界3位で、売上高営業利益率は家電量販大手のなかでトップに立つ。未上場企業でもあるため、その素顔はベールに包まれている。孤高の家電量販店の強さの秘密を探る。

JR札幌駅前で建設が計画されている高さ約200㍍の高層ビル。ヨドバシは再開発準備組合のメンバーに名を連ねる。建設予定地の一部には、2009年に閉店した西武札幌店(札幌市)があった。ヨドバシは11年にセブン&アイから西武札幌店の跡地を取得し、長い時間をかけて構想を練りながら再開発を目指してきた。

ヨドバシと百貨店業界には因縁がある。01年に開業した「ヨドバシカメラ マルチメディア梅田」(大阪市)。その土地は、JR大阪駅前の旧大阪鉄道管理局の跡地入札の際、三越などの提示額を上回る額で落札した。この案件は、西武百貨店も出店を目指していた。ほかにもヨドバシは旧近鉄百貨店京都店(京都市)を取得して10年に大型店を開業、21年にはJR甲府駅前にあった山交百貨店(甲府市)の跡地に新店を開いた。

ヨドバシと百貨店に共通するキーワードは、「駅前」だ。老舗や電鉄系の百貨店は古くから、一等立地と呼ばれる駅前で営業してきた。西武池袋本店も日本有数の乗降客数を誇る池袋駅に隣接する。ヨドバシも全国に展開する24店の大半が、主要な駅の前で営業する。こうしたヨドバシの事業展開の歴史をたどると、今回、池袋駅前にある百貨店への出店に執念を持つのは必然といえる。

ヨドバシの歴史は写真用品の卸売会社から始まった。ヨドバシホールディングス会長の藤沢昭和氏が1960年にヨドバシカメラの前身となる藤沢写真商会を創業。74年に社名を現在のヨドバシカメラに変えた。来店客にサラリーマンや学生が多いことから、郊外のロードサイドではなく、平日に客が集中するターミナル駅前などの「レールサイド」に狙いを定め、新宿駅や上野駅前に出店してきた。

藤沢会長は、テナントとして出店するのではなく、多少投資額が大きくなったとしても土地を取得して店舗を構える「自前主義」を重視してきた。そごう・西武の百貨店への出店についても一部店舗の不動産を取得する考えで、その費用などは2000億円を超えるとみられる。

家電量販店の業界再編には背を向け、最大手のヤマダホールディングスビックカメラが同業を傘下に収める動きとは一線を画してきた。一方で近年注力しているのが電子商取引(EC)サイト「ヨドバシ・ドット・コム」だ。家電のほか、食料品や書籍など800万点を超える商品を取り扱っており、最短で即日配送する。配送料金は購入金額にかかわらず原則無料を打ち出している。

日本経済新聞社の小売業調査によると、ヨドバシカメラの21年度の通信販売売上高は2136億円だった。アマゾンジャパン(東京・目黒)やジャパネットホールディングス(長崎県佐世保市)などに次ぐ4位だ。足元では約600億円を投じて全国で翌日配送ができる体制の構築も進める。物流拠点を増やすことでECサイトの競争力をさらに高め、EC比率を3割から5割に引き上げる目標を掲げる。

新型コロナウイルス下で人の流れが変わり、好立地だった駅前の優位性は揺らいでいる。駅前の百貨店が多いそごう・西武も立地の良さを生かしきれず、3年連続の赤字に陥った。店舗とECの両輪で成長するヨドバシが、西武池袋本店内でどのような店舗を営業するのか。その戦略から、小売業の店舗の未来が見えてくる。

(坂本佳乃子)