「未婚化が進んでいると聞くけど、まわりには結婚したい男性も多いよ」「収入が安定していないからとか経済的な理由はよく聞くけど、女性が結婚をためらう理由はほかにもありそうだね」
現在、男性の生涯未婚率は3割弱です。経済的な問題がよく理由に挙がりますが、ほかに原因はないのか。名瀬加奈さんと日比学くんが石塚由紀夫編集委員に聞きました。
名瀬さん「未婚化は本当に進んでいるのでしょうか」
進んでいます。国立社会保障・人口問題研究所では、およそ5年ごとに結婚や出産に関する「出生動向基本調査」を実施しています。2021年調査のデータで、18~34歳の未婚者で「いずれ結婚するつもり」と答えたのは、男性81.4%、女性84.3%でした。前回調査(15年)より、男女ともそれぞれ4.3ポイント、5.0ポイント下がっています。
未婚化を測る指標に生涯未婚率という数字があります。45~49歳と50~54歳の未婚率の平均値です。20年国勢調査での生涯未婚率は男性28.3%、女性17.8%でした。ちなみにフランス(14年)男性27%・女性22%やスウェーデン(20年)男性33%・女性27%のように、世界的な傾向ではあります。ただ欧米では婚姻届を出さない形のカップルが一定数おり、日本の事情とは異なります。
日比くん「なぜ結婚を避けるのでしょう」
できない理由と、しない理由があります。できない理由の代表はやはり経済面です。雇用の非正規化が進み、安定した収入が見込みにくい層が増えたことで、踏み切れない人も増えたようです。
しない理由は、「気楽だから」が多いですね。21年「出生動向基本調査」によると、独身生活の利点は「行動や生き方が自由」が男性(70.6%)、女性(78.7%)ともにトップでした。特に女性にとっては、因習的な性別役割分担が残る現状で結婚すると、家事・育児や「嫁」の役割が求められ、自由を束縛されると思うのでしょう。
名瀬さん「出会う機会が減っているとも聞きます」
新たな懸念材料はシングル男女の偏在という現象です。25~34歳の男女別シングル人口(未婚と離死別の合計)を国勢調査で見てみましょう。そもそも生物学的には男性が多く生まれるうえ、女性は早婚傾向などもあり、男性438万人に対して、女性350万人という差です。
これは都道府県別の格差も大きく、栃木や茨城、愛知、静岡などでは1.4倍を超えます。製造業などが多い地域は男性が就業しやすい半面、女性に魅力的な仕事が少ない。男女比が不均衡では、マッチングしようにも、必ず男性が余ります。
日比くん「歯止めをかける策はないのでしょうか」
実は「一生結婚するつもりはない」という男女は、2割もいません。結婚したい人ができる社会にすることが大事なのです。
男女ともに共働き志向が強まっています。21年出生動向基本調査で結婚相手に求める条件(複数回答)として、未婚男性の48.2%が「(女性の)経済力」を挙げました。97年調査30.8%から大幅増です。ところが、「家事・育児の能力や姿勢」を求める回答は21年でも91.5%に達しており、97年86.8%からさらに増えているのです。
女性側だけに外での稼ぎと内助の功の両方を求めるのは虫が良すぎます。総務省調べでは、共働き夫婦の1日の平均家事時間は妻178分に対して夫はわずか22分。こうした実態が、女性に結婚をためらわせるのでしょう。
未婚の理由としてシングル男女の人口差を紹介しましたが、性別役割分担意識もその一因とみられています。伝統的な家族規範が根強い地域から若い女性が流出しています。本当に結婚したいなら、男性は行動で示すべきです。
ちょっとウンチク 高度成長からの因習 壁に
日本の性別役割分担は高度経済成長期に根付いた。それに一役買ったのが大手製造業などによる「新生活運動」だ。企業が、理想の暮らしを指導する。日本鋼管川崎製鉄所(当時)の資料には「日夜生産に従事する夫の留守を守る家庭婦人が誇りを持って幸福な家庭と明るく秩序正しい社会を築く」とある。
企業は仕事のために男性に結婚を促し、妻には内助の功を求めた。労働に肉体の強健さが必要なら、男性が外で働くことに一定の合理性はあったろう。しかし現代の間尺に合わない価値観は個人に不自由を強いるだけだ。
(編集委員 石塚由紀夫)
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