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群馬の伊香保温泉をメタバースで再現へ 世界から誘客

メタバースとは「超越」を意味する「メタ」と「宇宙」を示すユニバースの「バース」を掛け合わせた言葉で、3次元の仮想空間を指す。パソコンやスマートフォンなどでアバター(分身)を動かすなどして、仮想空間内を自由に行動できる。ゲームなどでの活用が進んでいるが、ビジネスでの活用も増えており注目を集めている。

地元経営者ら4人で構成される「伊香保デジタル化実行委員会」が中心となりプロジェクトを進める。3次元コンピューターグラフィックス(3DCG)を得意とするメンバーがいたことから、2022年2月ごろに伊香保のメタバース化を構想。渋川伊香保温泉観光協会(群馬県渋川市)も協力し、委員会と地域の事業者をつなぐ役割を担う。

伊香保温泉のシンボルともなっている石段街を中心に温泉街周辺をメタバースに再現し、23年春の完成を目指す。射的場ではゲームを楽しんだり、土産店などでは実際に商品を購入できたりする仕様にしたいという。田中一行委員長は「自分のアバターが温泉につかって、友達とまったり話せるようにもしたい」と笑う。

榛名富士をつくったという伝承がある巨人「ダイダラボッチ」の登場や、石段街に温泉まんじゅうを転がすといったメタバースならではの演出も考えている。「海外の方に伊香保温泉を感じてもらい、行きたいと思ってもらえれば」と田中委員長。メタバースに伊香保を再現し、世界に向けてPRする狙いだ。

9~10月にクラウドファンディング(CF)を実施。石段街の下段から中段までをデジタル化し、360度を見渡すことができる3Dアニメーション動画を作成した。開始から2日で目標金額50万円を達成するなど話題を集めた。

第2弾のCFは11月13日から始める予定だが、内容は打って変わり、伊香保を舞台にした教育的な絵本の作成を計画しているという。地元の幼稚園や保育園に配り、子どものうちから伊香保の魅力に触れてもらう。絵本には拡張現実(AR)を活用し、スマホでかざしてダイダラボッチを登場させるなどのアイデアがあるという。

田中委員長は「メタバースは伊香保の観光資源を生かすツール。根底には、地元の活性化に向けて何かできればという思いがある」と話す。渋川伊香保温泉観光協会は「まだ伊香保温泉に来たことがない人にメタバースを通して魅力を発信できれば」と期待を寄せている。

(田原悠太郎)