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日本人が日本株を買う日 イェスパー・コール マネックスグループ グローバル・アンバサダー

私が来日した1986年夏は日本株の95%以上を日本人投資家が保有していたが、今では70%を切った。そして近ごろ多くの日本人が、「いつになったら外国人投資家は日本株を買ってくれるのか」と問いかけてくる。

残念ながらこれは間違った問いだ。本来は「日本の投資家はいつ自国市場を買い始めるのか」と問うべきである。なぜなら日本は地球上で最大の債権国であり、ジャパンマネーが投資するところ、グローバルマネーもついてくると考えるのが自然だからだ。

確かにこの1年間の円安で日本は安くなった。ビッグマックは東京で410円(約2.7ドル)、米国では5ドル前後だから、現在の為替レートだと価値がほぼ2倍に開いている。日本人の平均年間給与も440万円(約3万ドル)まで下がった。経済協力開発機構(OECD)によると2021年の米国の平均賃金は7万5000ドルで、日本の賃金は米国の半分以下である。

そんな中、安川電機、資生堂、米グーグルが日本への投資計画を発表している。この3社のリーダーは日本が貧しいのではなく安いのであり、日本の労働者が過小評価されていると見抜いている。

この動きに日本の投資家はついてこられるだろうか? 過去数十年間、日本の投資家は自国市場への投資を控えてきた。しかし日本企業が確かな事業戦略を提示するようになれば状況は一変する。国内の投資家が日本企業の価値を信じていないからこそ、日本企業の半分は簿価を下回って取引されている。

円安は変化の起爆剤になる可能性がある。日本にとって最も貴重な人的資源をめぐる競争を激化させるためだ。

頭脳流出はすでに始まっている。外国人看護師は低賃金で上昇余地も限られるため、日本での就職に消極的になっている。かたや日本人エンジニアは、日本に進出するグローバル企業に引き抜かれるか、シンガポールやドバイのスタートアップで一旗揚げるかの選択肢しかない。

日本は頭脳流出の加速を許容できない。円安になるほど日本の優秀な人材が流出する可能性が高くなり、企業のトップは戦略の根本的な見直しを迫られる。たとえばNTTは年功序列の文化を根本的に断ち切って、成果報酬を導入しようとしている。 

これは投資家にとって重要な動きだ。なぜなら歴史上、生産性や収益の成長はいつも人材から生まれるからだ。

グローバル投資家も国内投資家も、HX(Human Capital Transformation=人的資本の移行)を求めている。コンピューターやロボットはカネで買えるが、従業員にやる気を起こさせ、最高のパフォーマンスを発揮させられるのは真のリーダーだけだ。

チームがより良い仕事をし、より多くの収入を得るために刺激を与えるのが経営者の仕事だ。経営者が従業員のより良い未来への道筋を示すほど、投資家から注目されるようになる。国内の投資家が企業の新しい取り組みに賛同する準備が整えば、世界の投資家もそれに続くだろう。日本がリードすれば、グローバルマネーもついてくる。