· 

投資機会 危機に見いだす ブラックストーン会長兼CEO スティーブン・シュワルツマン氏

第24回日経フォーラム「世界経営者会議」(主催=日本経済新聞社、スイスのビジネススクールIMD、米ハーバード・ビジネス・スクール)は2日目の9日、国内外の経営者らが議論した。新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻で、企業は新たなビジネスモデルを模索している。経済安全保障や脱炭素などについても様々な意見が交わされた。

 

世界は多くの変化を経験している。1つ目がグローバル化への制約で、新型コロナウイルスによって起きた。2つ目は世界でのインフレとの闘いだ。日本など先進国で問題になっており、米国や欧州ではより深刻だ。ほぼ全ての中央銀行が同時に政策金利を引き上げ、世界経済を冷やし失業を増やしている。こうした金利上昇はここ15年はなかったことで、世界経済には劇的な変化が起きている。

エネルギー危機も起きている。移行計画を持たずにグリーン化を進めたためだ。ロシアのウクライナ侵攻によって欧州でエネルギー供給のバランスが崩れたことが、世界中に影響を及ぼしている。

新型コロナ禍の後、人々はもっと経験を積みたいと強く願うようになり、旅行とレジャー産業が高い成長を遂げている。エネルギーの分野では電気自動車(EV)関連だけでなく、エネルギー貯蔵、世界の電力網再建など興味深い企業が数多く出てきている。膨大な投資機会が生まれてくる。

私は常に革新的でありたいと思っている。他の人と違うことをするのが好きだ。データをみて他の人よりも早くトレンドの変化を察知し、優秀な人を雇って先んじて攻め入る。一例が1990年代前半に経験した米国の不動産危機時だ。不動産価格が暴落し買い手不在のなか投資した。今では世界最大級の不動産オーナーだ。

失敗もあった。事業が非常に小さい頃に鉄鋼流通センターに投資したが、経済が傾くとその会社は大赤字に転じ、我々は資本のほとんどを失った。いい面とリスクの両方を冷静に評価できるプロセスがなかったのが原因だ。

私はトップである限り二度と損を出さないと誓った。この痛ましい経験の形見として机の上に墓石の形の置物を置き、毎日目に入るようにしている。

日本は興味深い国だ。貯蓄額が非常に大きく、人々は勤勉で、技術を重要視している。我々の最初のファンドの投資家のうち3分の1は日本だった。我々は日本でプライベートエクイティ(未公開株)と不動産分野で活動している。個人投資家向けにも商品を販売している。ブラックストーンの発展において日本は多くの部分を占めている。

ソーシャルメディアの発達は世界の起業家精神に影響を与えている。世界中の人とつながりやすくなり、新しくビジネスを立ち上げる姿も目にしやすくなった。日本や欧州など、米国に比べるとイノベーションの力が弱いといわれていた世界各地で起業家精神が高まっている。

起業は簡単なことではない。本に書いてあるほどうまくはいかないものだ。多くの失敗を受け入れ、そこから学ぶ精神力が必要だ。素晴らしいアイデアを持ち、決して諦めなければ成功できる。

 Stephen A.Schwarzman 1985年にブラックストーンを共同創業。プライベートエクイティや不動産運用などを手掛ける世界屈指の投資会社に育てた。米エール大卒、米ハーバード・ビジネス・スクール経営学修士号(MBA)取得。