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広島からつなぐ仮想空間 ビーライズ(広島市) 研修でVR活用 疑似体験

ビーライズは3次元コンピューターグラフィックス(CG)のノウハウを生かし、研修やイベント向けなどに高度な映像を提供する。広島発信の仮想空間を全国に届ける。

3次元CGの技術者として働いていた波多間俊之社長が起業したのは2012年。「スマートフォンの普及もあり、ゲーム開発などへのハードルが低くなっていた」時代だった。折しも自身が描いた3次元映像が、最終的には印刷物などの2次元で表現されることに歯がゆさを感じていた。

まず仮想現実(VR)を使った広告などのコンテンツ開発に取り組んだ。ただ当時はVRはゲームとしてのイメージが強く、「なんだこれは」と受け入れられないことが多かったという。

VRをビジネスでどう役立てるか。一つの突破口になったのが電気工事大手、中電工との出合いだった。「作業員の研修用に使えるのでは」。同社からのアイデアをもとに開発したのが、高所の現場で作業する際の落下事故を疑似体験できるソフトだった。

従来の安全教育では、映像を見ても人ごととして忘れてしまうことが多い。VRを活用すれば没入感もあり、自分ごととして体験できる。波多間社長は「様々な企業研修に使えると確信した」という。

医療分野も有望だ。救急医療における現場対応や難しい手術など、見ただけでは理解や習得が難しい課題も、VRなら繰り返し疑似体験できるため、広島大学の医学部などで採用が進む。

ビーライズの22年9月期の決算は、売上高が前の期比48%増の2億8700万円だった。税引き利益も3.6倍の7600万円と好調だ。新型コロナウイルスの感染拡大で、リアルでの対面活動に制約が続いてきたことも背景にあり、波多間社長も「仮想空間での交流ニーズが急激に増えた」と話す。

中でも大規模な仮想空間「メタバース」が注目を集めている。ビーライズは中国電力系のエネルギア・コミュニケーションズ(広島市)と連携し、メタバース上で気軽にイベントが開ける仕組みを開発。企業や自治体向けのサービス展開を検討する。

プロ野球の広島カープと組み、仮想空間の中にアバター(分身)として入場したファン同士が交流しながら野球観戦を楽しむ「メタカープ」も22年からサービスを始めた。好きな選手の名前を叫んだり、点が入れば近くの人とハイタッチしたりもできる。メタカープにはシーズン中、毎試合数千人規模のファンクラブ会員が集まったという。

ビーライズの強みは3次元のCG制作からデザイン、プログラミングなど自社内でシステム開発を完結できるところだ。波多間社長は「仮想空間には距離や物理的な制約がない。作る場所も関係ない。広島発信で日本中で使える仮想空間を作っていきたい」と話している。

(古林悠夏)