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長期固定フラット35、異例の金利下げ 変動型の競争波及

低水準の変動金利との差が拡大を続け、利用者が減少しているためだ。変動型の競争が固定型にも波及してきた。

「サプライズだった。機構債(調達金利)の利率をもとに翌月の金利が上がると考えていたが、予想が外れた」。民間銀行が住宅ローンの変動金利で激しい競争を繰り広げるなか、フラット35までもが金利を引き下げる展開に、ある業界関係者は驚きを隠さない。

フラット35は、住宅ローンを35年固定金利で提供する国の制度。住宅金融支援機構が住宅ローン債権を担保にした債券(MBS債)で資金を調達し、提携先の民間銀行などが貸し出しの窓口となり提供する。

同機構はこれまで長期金利の動きにおおむね連動する貸出金利を示してきた。10月適用分の最低金利は、MBS債の利率が0.58%と前月比0.08%上がったにもかかわらず、貸し出し金利は1.48%と0.04%下げた。調達金利の上昇に対して貸出金利を下げるのは、団体信用生命保険(団信、契約者の死亡時などに残高がゼロになる保険)付きの現在の制度になった2017年10月以降初めて。今年11月分も小幅な上昇にとどめた。

住宅ローン市場では、政策金利に連動する変動金利で長年低水準が続き、金利引き下げ競争の主戦場になっている。上昇傾向が続く長期金利の影響を受ける固定金利との金利差は広がる一方だ。17年10月以降でフラット35と3メガバンクの最優遇変動金利の平均を比べると、当初は0.7%程度の差だったが、22年11月分は約1.1%と最大になった。

こうしたなか、フラット35の利用件数は減少している。21年の融資件数は6万件超と過去5年で4割減った。「民間の変動金利では不安」という理由からフラット35を選んできた利用者の一部も変動型への借り換えに動いているとみられる。

住宅金融支援機構は金利水準について「長期金利の動きを勘案して、自助努力もしつつ見直しをしている」と説明する。銀行のように預金を集めてはいないため、調達金利に加えて同機構の運営コストなどから金利を決めているが、利用者に選んでもらえるようにまさに「自助努力」で身を削ったようだ。

住宅ローン比較サイト「モゲチェック」を運営するMFSの塩沢崇最高執行責任者(COO)は「変動型での激しい金利競争が固定型にも波及している」と指摘する。三菱UFJ銀行は4月に31~35年固定型を最低年1.8%から1.2%に引き下げた。その結果、「全期間固定を選ぶ人が大幅に増えた」(同行担当者)という。

みずほ銀行は全期間固定金利を選ぶ人に先着順でスマートスピーカーなどをプレゼントするキャンペーンを実施中。りそな銀行が1.315%、常陽銀行が1.1%など全期間固定を低金利で提供する銀行も出てきている。

固定型の金利低下が広がれば、将来の金利上昇への不安から長期固定を選びたい人にとっては魅力的だ。だが低金利下で身の丈に合わない借り入れをする人が増えればリスクにもなりうる。将来の収支計画などリスク管理の徹底が求められる。

フラット35は金額ベースでは民間を含めた国内住宅ローンの利用実績の約1割を占め、21年度末時点で同機構の残高は18兆5000億円を超す。収入や雇用形態などの審査が比較的緩く、民間のローンを利用しづらい自営業者や年金受給者などの住宅取得を支援してきた。営利目的の民間と一線を画し、住宅需要を喚起したい政府が金利優遇などの政策を投じている。

フラット35の金利引き下げが続けば民業圧迫との批判も出かねない。官と民の役割を巡って今後改めて議論となる可能性もある。

(五艘志織)