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米、金融・テックに課税強化 最低でも利益の15%負担義務 日本企業も対象 米大試算、バークシャーやアマゾン影響大

バイデン米政権は大企業偏重の分配を修正し格差是正につなげようとしている。新制度では一部の大企業に追加の税負担が生じ、金融とテクノロジー業界で増加分の6割超に達するとの試算もある。米国で事業を手がける日本企業も新制度の対象で、税負担が増える可能性もある。

 

新たな税制は8月に成立した歳出・歳入法に盛り込まれた。財務諸表上の利益に15%の最低税率を設け、税務会計上の納税額との差額を納付させる仕組みだ。

米議会の両院税制合同委員会は150社程度が対象になり、今後5年間で課税額が1086億ドル(約16兆円)、10年間で2222億ドルになると見積もっている。バイデン大統領は大企業の税逃れを批判しており、「金持ち企業が税金をゼロにする時代は終わった」と意義を強調している。

新税制は、各種控除などを調整した財務諸表上の「アジャステッド・フィナンシャル・ステートメント・インカム」(AFSI)が対象となる。ただ何が控除対象になるかなどAFSIの算出方法は明らかになっていない。

米ノースカロライナ大は23年1月から始まる新制度が21年に導入されたと仮定し、米国に本社を置く企業の支払額を試算した。AFSIや税務会計上の納税額が明らかでなく、実際の企業の負担を示すものではないが、78社で税負担が増え、総額は317億6700万ドルに達する。

業種別では金融が22社と、支払額全体の35%を占めた。インターネットサービスや通信、半導体関連などテックも15社を超え、同30%と続く。

個別ではバークシャー・ハザウェイが83億3100万ドルと、1社で全体の4分の1を占める。バークシャーは様々な企業に投資をしている。投資先の評価が高まった場合、会計上は評価益を計上しているが、税務上は利益が実現していないことから課税が繰り延べられている。

そのため会計上の利益額とその年に払った納税額に差がある。「バークシャーは税務戦略にたけ税負担が小さくなっている」(国際税務に詳しい専門家)との指摘もあり、会計上の利益を基にした税負担を求める新制度では追加負担が大きくなるとみられている。

2位はアマゾン・ドット・コムで27億7200万ドル。3位のフォード・モーター(18億5100万ドル)の次は、AT&T(15億4900万ドル)、イーベイ(13億3300万ドル)とテック企業が続く。

経営者は株主に向けて利益を大きく見せたい一方、現金が流出する納税額は抑えたいという動機がはたらく。試算は税額控除などを駆使し「税逃れ」をしてきたと批判される金融・テックの負担が増す結果となる。

新税制はAFSIが直近3年間の平均で10億ドル(約1400億円)を超える大企業が対象で、不動産投資信託(REIT)などは対象外だ。米国外に本社を置く多国籍企業については、米国内でのAFSIが計1億ドル以上などの追加条件を満たした場合に対象になる。

米国の販売比率の大きいSUBARUは現地の販売会社が22年3月期に957億円の純利益を計上している。ただ対象となるAFSIは現時点で不明で、追加での税負担が生じるかはわからない。

ある大手商社は「米国子会社が適用対象になる可能性はある。追加負担は限定的と考えているが、今後公表される詳細を確認したい」と話している。現地に米国事業の統括会社を持つ国内の車部品大手も「影響を分析している」という。

米国に拠点を持つ日本企業などに対し税務アドバイスを行うEY税理士法人の秦正彦シニア・アドバイザー(米国弁護士)のもとには日本企業から「そもそも、うちは対象になるのか」などの問い合わせが増えている。

財務諸表をベースにする税制は異例で制度や運営は不透明な部分が多い。企業がAFSIの範囲を確定するのも困難だ。米公認会計士協会は財務省と内国歳入庁(IRS)に対して制度の詳細を早く出すよう要請した。

日本企業にも影響が及ぶ多国籍企業に関する項目も法律事務所ヴィンソン・アンド・エルキンスは「法文上、不明瞭な部分が多い。財務省などによって不明確な部分が早急に解決されることが期待される」としている。

多国籍企業にとってグローバルな税負担の把握はさらに複雑になる可能性がある。

米国が導入する新税制とは別に経済協力開発機構(OECD)加盟国など140弱の国・地域は21年にグローバル企業を対象にした15%の最低税率を設けることについて合意しているからだ。「2つの新たな税制に対応するための事務負担が多大となるのではないかと懸念している」(大手商社)との声も出ている。

(ニューヨーク=堀田隆文、ワシントン=高見浩輔、企業税務エディター 川瀬智浄)