· 

空き家解体、費用を知る 構造・立地で100万円超の差も

「台風や地震で万が一倒壊したときの被害が心配だった」。千葉県に住む40代の女性会社員Aさんは今月1日に始まった実家の解体工事についてこう話す。県内で一人暮らしだった母が亡くなったのは2022年3月。実家はAさんが相続したが、自分で住むつもりはなかった。築50年超と古く、1階と2階あわせて約45平方メートルと狭いためだ。最寄り駅から徒歩で約15分かかることもあり、貸したり売却したりできる見通しもない。

実家は住宅が立て込む密集地にある。敷地面積は約40平方メートルで、幅数メートル程度の道路に面する。解体費は200万円前後の見込みだ。建物を取り壊して更地にすると固定資産税が高くなるが「隣近所に被害が出ることを避けるにはやむを得ない」(Aさん)という。

鉄骨、RC造は解体に手間

総務省の調査によると、全国の空き家は18年に約850万戸と1998年に比べ5割弱増えた。空き家は親など親族が亡くなって相続で取得する例が多く、維持・管理費が負担になりやすい。例えば定期的な手入れの際に必要な光熱費や水道代、万が一の火事に備える火災保険料などだ。

立地条件などが悪く賃貸や売却が難しければ、建物を解体するのが一案だ。NPO法人、空家・空地管理センターの伊藤雅一理事は「現地をみたとき更地の方が老朽化した家があるより状況が分かりやすいため、買い手が付きやすくなる可能性がある」と指摘する。また相続した土地が不要な場合に国に所有権を引き取ってもらえる「相続土地国庫帰属制度」が23年4月に始まる。対象となるには多くの条件があり、更地にすることは条件の一つとなっている。

では空き家の解体費はどれくらいかかるのだろうか。まず知っておきたいのは、規模が同じ建物でも構造や立地によって費用が大きく変わるという点だ。家屋の構造は主に木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造(RC造)がある。鉄骨造とRC造は木造に比べ頑丈なため解体に手間がかかり、工期が長くなりやすい。廃棄する建材の量も多く、運搬・処理を含めた解体費は一般的に高くなる。

立地では空き家が住宅密集地にあるかどうかがポイントだ。密集地に明確な定義はないが、建物の前面が接する道路が幅4メートル未満、隣家との距離が60センチメートル未満とする考え方がある。道路幅が4メートル未満など狭くなると、一般的な戸建ての解体で使う中型重機を搬入できないことがある。多くは小型重機を使うため作業効率が落ち、工期が長くなりやすい。隣家との距離があまりなければより人手を掛けた作業が必要になりがちで、費用がかさむという。

構造と立地で費用にどの程度の差が出るかについて、解体工事の一括見積もりサービスを手掛けるクラッソーネ(名古屋市)に延べ床面積約100平方メートルの空き家の場合で試算してもらったところ、密集地にあるRC造が280万円程度と最も高くなった。非密集地にある木造を約130万円上回る。これはあくまで目安の一つで実際の費用は物件ごとに異なるが、参考材料にはなりそうだ。

石綿は除去費が発生

構造と立地以外の要因で解体費が増えることも多い。都市部で目立つのが敷地いっぱいに家が建ち、重機を入れるスペースがない場合だ。場所をつくるため建物の一部をバールなどを使って手で壊す必要があり、費用増につながる。

建材にアスベスト(石綿)を使っている建物は除去費が発生する。石綿は吸い込むと肺がんなどを起こす恐れがあり、06年9月に含有製品の製造・使用が全面禁止された。クラッソーネの最高執行責任者(COO)、堀口晃司氏は「禁止前に建てた家の多くは石綿を含む」と話す。敷地に浄化槽といった埋設物や大きな木・石がある場合も別途費用が必要になる。

解体工事に伴う家計の負担を抑えるにはどうすればいいか。まず大切なのは解体業者から相見積もりを取ること。「保有する重機や作業員の人件費などが業者で異なり、見積額に差が出ることは珍しくない」(伊藤氏)ためだ。

工事の時期も注意が必要だ。家屋がある住宅用地は200平方メートルまで特例で固定資産税が本来の6分の1になっているが、更地にすると特例が原則外れる。「負担調整措置の適用で税額は3~4倍程度になる場合が多い」(総務省)。課税判断は1月1日時点なので、これ以降の解体を考えたい。

仙台市や神戸市、東京都墨田区など解体に補助・助成金を出す自治体も多い。神戸市は最大100万円を支給する。適用条件や金額は自治体により異なるため、確認しておこう。

(勝莉菜乃)