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【社説】税回避の減資を誘う税制は見直しを

資本金を1億円以下に減らす企業が後を絶たない。損失を埋めるための減資はあってしかるべきだが、税法上の中小企業となることで外形標準課税の対象から外れるのが主な目的なら好ましくない。税回避のための減資を誘う税制には問題があり、見直すべきだ。

減資は新型コロナウイルス下で苦境に立たされたサービス産業に目立つ。特に旅行業界はエイチ・アイ・エスが10月の臨時株主総会で決めたほか、これまでにJTBや日本旅行なども減資した。

いずれも損失を抱えており、その処理が目的だが、資本金が企業規模に見合わないことは否めない。かつてシャープが1億円に減資しようとしたものの、批判を浴びて取りやめたこともある。

全国の法人数で、資本金が1億円を超える大企業が減少傾向にあるのに対し、1億円ちょうどの中小企業は増えている。税優遇を得られるのが理由の一つだろう。

例えば利益をすべて繰越欠損金と相殺でき、税負担を回避できることだ。大企業には相殺に限度額があり、残った利益は課税対象になる。都道府県が課税する法人事業税の外形標準課税は、中小企業は対象外だが、大企業は赤字でも資本金などに応じて課税される。

外形標準課税は変動の大きい企業の利益への課税割合を下げる、成長志向の税制として導入された。これにより都道府県の税収が安定的になる一方、成長する企業にとっては相対的に税負担の軽減につながるはずだ。

それでも外形標準課税の対象企業はピーク時の3分の2に減少している。資本金がその基準となることで、企業の意思決定にゆがみをもたらしているとしたら、税の中立性の観点から問題がある。

政府・与党は来年度の税制改正で、税回避を目的とした大企業の減資を規制するため、外形標準課税の基準として、資本金のほかに企業規模を適切に反映する指標を加えることを検討している。望ましい方向といえよう。

新たな基準では企業行動をゆがめない慎重さが求められる。例えば従業員数だと、中小企業の枠に収まるよう雇用の数に壁をつくる懸念がある。既存の中小企業に影響を与えない配慮も必要だ。

観光需要が戻り始め旅行業界も業績は回復基調にある。外形標準課税の基準が見直されるころには、税優遇に頼らずに済む体力を回復していることを期待したい。