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住みたい街ランキング、憧れよりも「住み心地」重視に

不動産関連会社が首都圏の住宅地人気調査を相次ぎ発表している。もともと賃貸や購入で「住んでみたい」と思う憧れの街の人気投票から始まったが、最近は実際に住んでいる人に聞き取りし、「住み心地」や「地域のつながり」などを重視した調査が増えている。人気上位の街は地価や家賃も高いため、割安で住みやすい街を発掘する狙いがあるようだ。

 

最も知名度が高いリクルートの不動産情報サイト「SUUMO」の調査。2008年に調査を開始し、特に影響力があるのは「住みたい街(駅)ランキング」で、上位に選ばれるとメディアが取り上げるので注目され、知名度やブランド価値向上につながるとされる。

2022年は首位が横浜(横浜市)、2位が吉祥寺(東京都武蔵野市)と知名度、利便性が高い街が並んだ。SUUMOの池本洋一編集長は「新型コロナウイルス禍で消費者が重視するものが変わりつつある」と指摘。20年から新たに実際に街に住む人を対象にした「住み続けたい街」調査を始めた。

10月に発表した22年の「住み続けたい街(駅)」の首位は湘南海岸公園(藤沢市)、4位は鵠沼(同市)と、神奈川県郊外の街が上位に入った。子育てのしやすさや住民同士のつながり、行きつけの飲食店の有無、地域の祭りなどの活動の活発さ、街に対する好意度などで高い評価を得た。

長谷工アーベストの「住みたい街(駅)ランキング」は22年の首都圏総合ランキング1位が吉祥寺だった。公園や商業施設が充実し、生活しやすい点が評価されている。同社担当者は「吉祥寺はずっと上位にあり、『お墨付きがある』ため(住む人の)安心感につながっている」と指摘する。

顧客を対象にすると結果が偏向する可能性があるため、外部の会社に調査を依頼。担当者は「消費者の価値観を知り、事業に生かすために調査している」と説明する。各社の調査で上位に選ばれる吉祥寺駅がある武蔵野市の担当者は「素直にうれしく思うが、一喜一憂せず期待に応えられるよう取り組む」と話す。

大東建託も生活や交通の利便性を主に評価する「街の住みここち」など複数調査している。多くの調査で横浜市や東京都心の街が上位に並んだが、「街の幸福度(自治体)」調査では埼玉県鳩山町が首都圏で首位となった。

鳩山町は1970年代にニュータウンが造成され、現在も住み続ける人が多い。鉄道駅がなく交通利便性は決してよくないが、健康長寿を目指す取り組み、交通事故が少なく治安が良い点などが評価された。同町は「調査により、他の自治体よりも幸福感を持って暮らしている住民が多いことが裏付けられた」(担当者)と話す。

住宅ローン会社アルヒの「本当に住みやすい街大賞」は、今後の発展性や交通利便性などの視点で専門家が駅ごとに評価する。過去の住宅ローンの契約状況なども考慮し、都内の一等地ではなく、一般的な会社員が購入できる街が多く並ぶ。

22年の関東版の首位は神奈川県の辻堂、5位は千葉市の海浜幕張だった。千葉市は「都内にアクセスが良い割に緑も多く、商業施設や大型病院などもそろう。集合住宅に住むファミリー層から評価されたのではないか」とみる。

大東建託賃貸未来研究所の宗健所長は「各調査は人気度評価や機能性評価、情緒的評価など性格が異なる。ランキングの前提条件を確認し、妥当性を考えて参考にすべきだ」と話している。(岩崎貴行、二村俊太郎)

「住み続けたい街」各駅停車駅多い

SUUMOの池本編集長
住宅地人気調査の動向についてSUUMOの池本洋一編集長に聞いた。
――従来の人気調査の課題は。
「住みたい街ランキングはいわば『外の目』で、憧れの要素が強く出る。マイナーだが実は住みやすい街が上位に上がってこない。コロナ禍で自宅や自宅周辺で過ごす時間が増え、実際の街の魅力を知りたいというニーズが高まっている」
――住み続けたい街と住みたい街のランキングは結果内容がかなり異なります。
「住み続けたい街では各駅停車駅が多く選ばれている。商業施設などのハード面だけが重視されているわけではない。住んでみないとわからないリアルな情報に関心が高まっている」
――消費者の価値観が変わっていますか。
「ライフスタイルが多様化し、重視するものが分散化している。ランキングをつくる際、注目トピックを1つではなく、5~10個取り上げるようにしている」