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NFT平均価格、7~9月は9割下落 規制観測でマネー流出

7~9月の平均価格はピーク時の1~3月から9割近く下落した。米証券取引委員会(SEC)が調査を進めていることが判明し、規制強化の観測から投機マネーが流出している。次世代インターネット「Web3(ウェブスリー)」を担う新しいデジタル通貨が正念場を迎えている。

NFT取引を追跡するノンファンジブル・ドット・コムによると、7~9月のNFTの平均価格は154ドルと1~3月から9割近く下落した。NFTの売買で使う暗号資産(仮想通貨)のイーサリアム(2021年末比で6割安)を上回る下落幅だ。7~9月のNFTの売却価格から購入価格を引いた売却時の損益の合計は4億5000万ドルのマイナスと四半期で初の損失となった。

全体の取引額も低調で、調査会社ダップ・レーダーによると、10月のNFTの取引額は約6億ドルと1月から9割減った。

投機マネーが急速に縮む背景に規制強化の観測がある。3月にSECが調査するとの報道がされた。10月に入り、サルのイラストのNFT「ボアード・エイプ・ヨット・クラブ(BAYC)」を発行する米ユガラボを対象に「証券の可能性がある」として調査を進めていることが判明した。

BAYCはサッカーブラジル代表のネイマール選手など著名人が購入したことで知られる。1枚の画像が約280万ドルで取引されるなど価格が高騰し、取引額は累計で20億ドルを超える。

SECが問題視するのはユガラボが3月にNFT保有者にエイプ・コインという仮想通貨を無料配布したこととみられる。エイプ・コインはその後売りに出され、4月には時価総額が約70億ドルの規模となった。コインの発行・運営は別組織だが、配布したコインの値上がり期待でNFT価格が上昇した点などが証券の要件に該当する可能性がある。ユガラボは「規制当局がウェブ3を研究しており、様々な問い合わせに協力している」と説明する。

NFTはデジタルアートへの投資から、仮想空間「メタバース」上の土地の取引など急速に活用が広がっている。売り切りではなく、発行元と購入者がつながりを持てる点が特徴だ。例えばアニメ製作プロジェクトを支援するNFTでは、購入者が資金の使い方に投票できるほか、プロジェクトの成功でNFTが値上がりするなど証券に近い性質があるものもある。

米国では証券性の度合いを測る「ハウェイテスト」があり、①資金を集めているか②購入者と共同事業か③購入者に収益性があるか――の3つのポイントから調査されている。証券に該当すればインサイダー取引などが禁止され投資家保護の利点ある一方、発行側は資金調達のハードルが上がり、個人がプロジェクトを立ち上げて資金集めることが難しくなる。

日本でも証券に該当する場合は金融商品として登録が必要になる。仮想通貨交換事業者のビットフライヤー(東京・港)は「基準が不明瞭であり、証券に該当する可能性のあるNFTは複数出回っている」と話し、「自社で取り扱う際は、証券に該当しそうなものは外している」という。

規制の枠組み作りが遅れており、証券性の問題に加え、所有権など法的な位置づけの議論はこれからだ。発行元や投資家からは「明確な基準が欲しい」との声があがる。

価格下落で投機ブームが一巡したようにみえるが、市場では有望な投資先として期待を寄せる声も少なくない。6月以降、取引量は下げ止まっている。SBINFT(東京・港)の西山祥史氏は「投機資金が抜けて実用性のあるNFTを中心に健全なマーケットになろうとしている」と話す。

(金融工学エディター 小河愛実)