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コインランドリー、値上げに苦慮 ライバルは自宅洗濯機

成長軌道にのってきたはずの業界は光熱費高騰の打撃で窮地に陥る。あらゆるモノやサービスが値上げに踏み切るが、コインビジネスは100円の値上げが命取りになり得る。店舗間の競争が激しくなるなか、客をとるか、利益をとるかの選択を余儀なくされている。

「とにかくガス代がかさんでいる。値上げを検討する段階にはいった」。北陸でコインランドリーを展開する黒川クリーニング社(福井県坂井市)の黒川俊之専務は話す。コインランドリーでは衣類の乾燥ニーズが高く、多くの店で洗濯乾燥機や乾燥機が設置台数の大半を占める。乾燥の熱源であるガスの料金が経営を圧迫しているという。

乾燥短縮が「命取り」になる恐れ

燃料の液化石油ガス(LPG)は値上がりがとまらない。コインランドリー1店舗の1カ月あたり使用量は100~1000立方メートルとされる。会社によって取引価格にばらつきがあり単純比較はできないが、日本エネルギー経済研究所石油情報センター(東京・中央)が発表した9月のLPGの一般小売価格(50立方メートル、速報値)は全国平均3万3209円と前年同月比14%高く、特にこの1年の上昇幅は大きい。

ガス代に加え電気料金や洗剤代などあらゆるコストが増えている。それでも簡単に値上げできない事情がある。全国チェーン運営企業の幹部は「ライバルは他店であり家の洗濯機でもある。100円の値上げ、乾燥時間1分の短縮は命取りになりかねない。客はシビアだ」と指摘する。

コインランドリーでは現金払いが主流だ。1円や10円単位の料金調整は基本的には難しい。中型の洗濯乾燥機の利用料金は60分間で1200円から1500円が平均といわれ、料金を上げるなら100円単位の設定変更になる。もしくは乾燥機の稼働時間を100円で10分から8分に短縮するなどの実質値上げをすることになる。

ただ、関東中心に展開するwash-plus(ウォッシュプラス、千葉県浦安市)の高梨健太郎社長は「(利用料金を上げると)店によっては光熱費上昇分を上回ることもある。客のデメリットが大きい」と話す。同社ではキャッシュレス決済可能な機械を使用し、天候などで増減する需要に応じて料金を変動させるダイナミックプライシングを導入し利用者獲得を狙う。

市場規模1000億円超え

これまで国内市場は成長軌道にのってきた。新型コロナウイルス禍でクリーニング店は売り上げが落ち込むなか、コインランドリーの市場規模は2020年に1000億円を超えた。成長市場に目をつけた他業種からの参入や投資目的の出店も増えた。店舗数は飽和状態になりつつあるとの意見もある。一方、一度に多くのものを洗濯乾燥でき、家事の一助になるという特色と需要が揺らぐことはないとの見方は一致する。

全国に約500店舗ある「コインランドリーピエロ」を運営するセンカク(東京・新宿)の岡村義行社長は「今のところ値上げは考えていない。企業努力の積み重ねでなんとかするしかない」と話す。各社とも冷暖房の温度設定や使用備品の見直しなど、数百円、数千円単位のコスト削減に頭をひねる。

値上げせず粘ってきたが万策つきてしまった――。地方地盤の中堅企業は10月、乾燥機の実質値上げを決めた。約100店舗で乾燥機の稼働時間を1分短縮した。1店舗あたりの光熱費は1年前と比べて50%以上高くなっていたという。「客離れの懸念はもちろんあるが仕方ない。いつになったらコスト上昇がおさまるのか」(店舗開発担当者)。あらゆるモノやサービスが値上げの波にのまれ、コインランドリーも例外ではない。洗濯を取り巻くジレンマはまだ続きそうだ。

洗濯以外の魅力に知恵

集客力を高めるため、運営会社は洗濯以外の魅力の演出に知恵を絞っている。例えば「併設のクリーニング店スタッフが洗濯の助言をする」(黒川クリーニング社)、「リモートワークや楽器演奏可能な防音ルームを整備した店の出店」(ウォッシュプラス)、「泡切れが良く洗濯時間を短縮できるオリジナル洗剤の使用」(センカク)などがみられる。

徹底した商圏調査を踏まえた好立地への出店に加え、付加価値サービスによる勝ち残りを模索している。

近年は小田急不動産(トランクルーム併設)やファミリーマート(コンビニ併設)など、自社事業との相乗効果を狙った大手の参入も目立つ。立地の良さだけでは競争優位性を保てない時代に突入しているようだ。

(鍜治美佑)

コイン不要ランドリー増加中

キャッシュレス化に対応するコインランドリーも増えている。専用スマートフォンアプリを導入し、クレジットカードやキャリア決済に対応する。アプリ会員向け割引サービスを適用する企業もあり、現金と比べて利用料金の調整がしやすいメリットがある。まだ主流ではないが、利用が広がれば店舗での現金回収頻度を減らすことができ人的コスト削減も期待できるようだ。