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量子も実用、「桁違い」に挑戦 技術活用が市場ひらく スマートワーク経営調査

市場開拓力ランキングの上位にはこうした最新技術を巧みに活用し、文字通りの「桁違い」に挑戦する先進的な企業が上位に並んだ。

SOMPOホールディングスは2022年度から損害保険引受業務で疑似量子コンピューター「CMOSアニーリング」の実用化を進めている。保険業務における量子技術の実務利用は世界初の試みで、日立製作所と手を組んだ。

全世界で大規模災害が増え、リスクを抑える損害保険の役割が高まっている。損保会社は引き受けた保険のリスクを分散させるため、別の保険会社と複数の「再保険」契約を結ぶ。再保険の最適な利用割合(ポートフォリオ)を見つけるには、個々の契約条件や災害の発生確率、地域などを考慮した複雑な計算を長時間かけて解く。

量子技術を生かせば、従来の約100倍規模の保険契約のポートフォリオを計算できる。保有リスクを抑えつつ、保険料収入や災害時に払う補償額の組み合わせを最適化し、想定できる収益も8%高まるという。地震保険から適用を始め、25年度をメドに水害など他の自然災害に範囲を広げる計画だ。

量子コンピューターは実用段階に入りつつある。NECグループは情報通信機器などのメンテナンスに使う保守部品の配送計画作りに量子技術を生かす。従来は経験豊富な社員が担った作業を遜色ない水準で代替できるという。将来は通信基地局や風力発電機の効率配置にも応用できそうだ。

みずほフィナンシャルグループは慶応義塾大学や米IBMが設立したコンソーシアムに加わり、金融派生商品の価格決定に量子技術を活用する。22年1月には関連特許も取った。

実験や研究によって蓄積された膨大なデータは、市場開拓をめざす企業にとって宝の山だ。素材や製薬の分野では、大量のデータから統計分析の手法で新素材を探る「マテリアルズ・インフォマティクス」の活用が進む。特許文書の大規模解析を生かす試みも増えている。22年のスマートワーク経営調査でビッグデータの活用事例を分析したところ、新製品や新事業開発が90事例と最多だった。

競争優位を作るにはお金も要る。調査では21年度の売上高に占めるICT(情報通信技術)投資の比率が平均1.34%と20年度から0.04ポイント、19年度比では0.15ポイント増えた。ICT投資の売上高比率が目安の1%を超えた企業は22.2%。2年間で3.5ポイント増え、5%以上の回答も3.4%あった。3%前後とされる米国や欧州とは開きがあるが、日本企業のICT投資も着実に増えている。

高度なICTを磨いた企業は桁違いの成果を見せる。富士フイルムは国立精神・神経医療研究センターとアルツハイマー病の進行予測に人工知能(AI)を生かす。軽度認知障害患者が2年以内にアルツハイマー病へ進むかどうかを、最大88%の精度で予測することに成功。研究成果は22年春に英科学誌ネイチャーの関連誌に掲載された。

徹底したDX(デジタルトランスフォーメーション)で顧客価値を向上させる事例もある。イオンリテールが運営する「イオン薬局」はクラウド型電子薬剤服用歴「Musubi」を22年内に全店に導入する。タブレット端末で患者に服薬を指導したり、薬歴作成を支援したりする。個々の患者に合わせた情報提供で理解が進み、満足度の向上につながっている。

台頭するメタバース市場に挑むのはソニーグループだ。23年初頭にVR機器「PSVR2」の発売を予定する。装着したユーザーの視線を捕捉し、CG(コンピューターグラフィックス)描画の負担を減らすなど最新技術を詰め込んだ。メタバースの市場規模は30年までに1千兆円を超えるとの試算もあり、桁違いな市場開拓に挑む。