「AI@」と題した研究部門が主催するイベントを米ニューヨーク市で開き、一部をウェブ中継した。スンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は冒頭に流したビデオメッセージで、「AIは世界の情報を整理して誰でも使えるようにする当社のミッションを実現するための重要な手法だ」と説明した。
同社が重点的に取り組んでいる分野のひとつが文章をもとにした画像や動画の生成で、画像では英スタートアップが今夏に公開した「Stable Diffusion(ステーブル・ディフージョン)」が話題になった。グーグルの上級研究ディレクター、ダグラス・エク氏は「文字から画像を生成する技術はもっとも目立ち、人気の領域」と述べた。
2日には画像に加え、より難易度が高い動画を生成する技術について説明した。開発を進めている複数のAIモデルを組み合わせることにより解像度が高い動画を生成する構想で、この手法でつくった50秒ほどの動画を初めて公開した。
具体的には「木の枝に引っかかった風船」「カメラを木から動物園の入り口に振る」「キリンの頭が画面横から入る」などといった指示に基づいて生成した一続きの動画を披露した。高解像度の動画の生成に重点を置いた「Imagen Video(イマジェン・ビデオ)」と、一貫性のある動画に焦点を当てた「Phenaki(フェナキ)」を組み合わせて実現したという。
翻訳も力を入れている分野のひとつだ。ズービン・ガハラマニ副社長は「世界には約7000の言語があるが、オンラインでよく使われているのはわずかだ」と指摘し、主要な1000の言語に対応する翻訳システムをつくる方針を示した。また、この一環として400言語に対応した通訳システムを開発したと説明した。
AIの開発には米メタも力を入れ、10月に学習のための文字情報がなくても利用できる通訳システムを公開した。景気の減速感が強まるなか、一部の投資家は同社が息の長い投資を拡大していることを非難している。グーグルは提供中のグーグル翻訳で対応言語を増やしていると説明するなど、短期的な成果を求める投資家への配慮も示した。
AIの活用は災害対策などの分野でも進め、洪水や山火事の被害を予測するサービスを広げていく考えだ。2017年にインドとバングラデシュで始めた洪水の予測は経済的な被害を最大50%軽減する効果があったと試算し、ブラジルやナイジェリアなど18カ国に拡大する。山火事の予測も北米やオーストラリアで提供地域を広げる。
グーグルはAIを「最も重要で影響が大きい技術」(ピチャイCEO)と位置付ける一方、差別の助長や武器への転用といった負の側面への懸念がある。説明会では業界に先駆けて18年にAI利用に関する原則を示したことを説明し、マリアン・クローク副社長は「数年以内に当社の技術基盤に『責任あるAI』にまつわるすべての機能を組み込む」などの対策を示した。
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