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[FT]空き家だらけの日本は中国への警鐘

すでに半ば見捨てられた不気味な村がたくさん存在する日本にとっては悲観的な予想だが、潜在的には中国にとってさらに大きな問題の予兆となる。多くの国にとって「日本化」は漠然とした懸念かもしれない。バブルがからむところには危険が存在するという不安だ。そして今、日本は人口動態の影響に関連して、中国に警告のクラクションを鳴らしているのかもしれない。

野村総合研究所による空き家の調査は、同社などが長年手掛けてきた日本の不動産市場に関する一連の調査の最新版だ。こうした調査はそろって、1980年代終盤に起きた不動産バブルが崩壊してから本当の意味で回復しなかった経済の様子を描き出す。あのバブル崩壊のトラウマと銀行に厳しい態度をとれなかった規制当局の失敗、そして回復力を育むことを目指した政策がお粗末な仕組みで、今なお苦痛とデフレとゆがみを引き起こしている。

このうちの大きな部分は不可避的に人口動態から生じている。人口の高齢化と減少は、移民によってはごく一部しか相殺されず、住宅の余剰への基本的な構造圧力を生み出している。これを一段と悪化させたのが、人口減少を無視し、不要または使用不能な不動産を取り除くことをせず、国内総生産(GDP)を守るために建設を促した数十年来の住宅政策だった。

野村総研の予想(誰も住んでいないセカンドハウスや賃貸・分譲用不動産を含む)のなかで特に目を引く想定の1つは、空き家の数が23年から38年にかけてほぼ倍増する一方で、800万戸以上の新規住宅が建設されるとの想定だ。

不動産価格に下押し圧力

国立社会保障・人口問題研究所の推計に従えば、23年からはこの状況を正当化するのが格段に難しくなるはずだ。日本の人口は10年以上減少しているが、住宅の過剰供給への影響は一時的に和らげられていた。世帯数が増え続け(寿命が延び、単身世帯が増えているため)、23年に(5419万世帯で)ようやくピークに達する見通しであるためだ。その後は、家余りがより急激に増加、不動産価格に対する下押し圧力が強まっていく。

中国にとり人口動態絡みで目下最大の問題は、米証券ジェフリーズが最近公表した調査リポートでストラテジストのサイモン・パウエル氏が論じたように、日本型の不動産危機をどう回避するか、ということかもしれない。人口予想に基づくと、中国はすでに将来のニーズを満たせる住宅を抱えている可能性があると同氏は指摘する。前例がないほど住宅建設に依存した国として、中国は日本と同じ過ちを犯し、人口動態は重要でないかのように新規建設をひたすら続ける恐れがある。

建国の父、毛沢東の肖像画の前で写真撮影をする女性ら((2015年、北京)=ロイター

そうなった場合、このリスクは不動産価格の著しい崩壊と日本がいまだに奮闘しているようなたぐいの調整となる。「1990年の日本と今日の中国の間に重要な相似がある。ある一定の成長が行き止まりに達したことだ」。パウエル氏はこう記し、中国の生産年齢人口がすでに減り始めたこと、そして日中両国が非常に高い水準の投資と有形資産の蓄積に基づく発展モデルに依存していたことを指摘する。

同氏の主張には大きく2つの柱がある。1つ目は、日本の経験は人口の変化と住宅価格の間の著しく非対称な関係を示唆しているということだ。研究によれば、上昇局面においては、人口の伸びが1%高まるごとに住宅価格が5%上昇してきた。逆の局面では、1%の人口減少はそれよりはるかに大きな価格下落をもたらす。

2つ目の柱は、中国の婚姻数が減少の一途をたどり、13年の1350万件から21年の760万件に減ったことだ。婚外子の割合が全体の60%にも達する国がある西側の経済協力開発機構(OECD)加盟諸国とは異なり、中国は恐らく、3%未満という日本のレベルに近いとパウエル氏はみている。婚姻数の減少は日本の場合と同様、短期的には世帯形成の増加をもたらすかもしれないが、結局はむしろ、継続的な出生率低下を確実にするだろう。

中国政府がとれる対策もあり、中国が日本の経験を再現するのを大幅に先送りするかもしれない要因もある。日本と中国とでは明らかに、重要な相違がある。バブルの膨らむ音が次第に大きくなっていくなかでも、中国は歴史上の同等の時点の日本よりも高い経済成長率を維持してきた。

これが中国政府に対し、1990年代初頭の日本の政策立案者に比べ、失敗に対処できるより大きな余地を与えているかもしれないとパウエル氏は論じる。この余地は無駄にすべきではないかもしれない。

By Leo Lewis

(2022年10月29日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)