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習氏3期目政権下の中国 コロナ収束で成長力回復 清華大教授 李稲葵氏

中国共産党で習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)の3期目政権が発足した。新体制下の中国経済の行方について清華大学の李稲葵教授に聞いた。

科技分野で力

――中国政府は2022年の経済成長目標を5.5%前後としていました。

「通年の経済成長率は3.7~3.8%程度と当初予想より低いと想定している。これは許容可能な数字だ。政府は国民の健康を優先している」

「目標を5.5%前後とした時、今のような新型コロナウイルスの急速な拡大を予想していなかった。中国経済の潜在的な成長力はまだある。今年は例外でコロナが収束すれば、経済は再び上昇に向かうだろう」

――潜在的な成長力を見込む理由は何でしょうか。

「理由は3つある。中国ではまだ多くの人々の生活水準は低い。勤労意欲は高く、成長力を支える力となる。第2に中国の貯蓄率が非常に高い。総貯蓄率は40%を超えており、投資の源泉となる」

「第3に科学技術分野で中国は急速に力をつけている。中国の論文の被引用率は世界一だ。1000万人超の大学卒業生の4割近くは工学部の学生でもある。約400万人という工学系卒業生の数は米国、日本、欧州、インドなどを合わせたよりも多い」

――若者の高い失業率が問題となっています。

「新型コロナのため、多くの経済活動を行うことができなかった。23年上半期に感染拡大や制限が緩和すれば、失業率の問題は比較的早く改善する」

――中国への技術輸出の制限で技術革新の減速が懸念されています。

「短期的には米国にとって効果的だが、長期的には有害だ。第1に多くの機器は回路線幅があまり微細でない半導体を使っている。こうした半導体は約5年以内に中国でも生産が可能となり、軍需を含む大半の需要を満たすことができる」

「第2に、回路線幅の微細化は基本的に上限に近づいている。今後の技術革新の焦点は光電融合技術や量子計算だ。この分野で中国と米国は同じスタートラインに立つ。米国は中国人に革新を強制している」

――IT(情報技術)企業の締め付けや共同富裕は中国市場への不安を招きました。

「中国政府はIT企業がメディアを含む社会的統治に影響を与えると懸念していた。過去2年以上の是正を経て影響は消滅した。IT分野は軍事的にも重要だ。今後は産業の発展を支援する政策に移行する。共同富裕は長期的なビジョンで短期的な目標ではない」

政策の軸は経済

――金融や不動産など構造問題への抜本策はとられていません。

「地方債や不動産問題は必ず解決しなければならず、ウミを出す切開手術が必要だ。中国はこれまで党大会の直前で、政治的安定が優先され、経済活動に注力できなかった」

「経済が潜在力を発揮し続けなければ、台湾問題や米国への対抗、失業問題、社会・政治の安定など何も解決できない。今後5年間、中国の指導者は経済問題にエネルギーの大半を費やし、政策の焦点は経済に戻る」

(聞き手は中国総局長 桃井裕理)

 Li Daokui 清華大学中国経済思想実践研究院院長。米ハーバード大経済学博士。58歳。