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関西の私鉄、成長へ海外人材活用に挑む 京阪は就業体験

自社での採用も視野に入れながら沿線企業に人材紹介を手掛けはじめた会社もある。関西の私鉄では活用が遅れ気味だったが、インバウンド(訪日外国人)の回復などを見据え、国際的な視点などを持った人材が必要だと判断。活用に向けてノウハウを蓄える。

「日本らしさをアピールし切れていないのが御社のホテルの課題です」。9月上旬、京阪HDの会議室ではオンラインで実施した就業体験に参加した留学生からの厳しい指摘が飛び交った。同社が京都市内で運営するホテルで外国人観光客を増やす施策をテーマに、3人1組のチームで事業立案を発表。人事部採用担当が熱心に耳を傾けた。

京阪HDが活用したのは関西大学などが関わる留学生就職支援組織が主催する就業体験プログラムだ。日本の大学や大学院に通う中国や韓国など出身の学生12人が参加。京阪グループの交通網と宿泊を組み合わせたツアーや多言語対応のホームページ作成など新しい施策を2週間で立案して発表した。

参加した立命館大学で学ぶ中国出身の女性は「鉄道だけでなく様々な事業を持つ京阪HDに魅力を感じた。各事業部同士の連携がさらに取れていれば一緒に働いてみたいと思う」と話した。

京阪HDの総合職で働く外国籍社員は現在2人。人事部の松谷匠課長は「外国人採用のために何をすればいいか分からなかった」と明かす。海外人材を将来採用するのを見据え、留学生が持つ能力や就活に対する意識などを学ぶことを狙って同プログラムの活用を決めた。

就業体験を通じ、多様な視点や主体性など留学生の語学力以外の魅力に気づいたという。同時にジョブローテーションを前提とする会社の人事システムと、専門性を高められる仕事を求める留学生とのギャップなど課題も浮き彫りになった。「インバウンド顧客の増加を見据え、就業体験で得た気づきを生かして海外人材採用の体制づくりを目指す」(松谷氏)という。

南海電鉄は日本で就職予定のIT人材へネパール国内で日本語教育を実施する

自社で海外人材を活用する前に、主に沿線の中小企業へネパール出身のIT人材を紹介する取り組みをしているのが南海電気鉄道だ。傘下の南海不動産(大阪市)が2021年から事業を手掛けており、これまでに24人が南海電鉄のシステム子会社を含む大阪府や和歌山県などの企業13社で内定を獲得した。

内定後の約半年間はネパール国内で日本語教育を実施し、日常会話レベルの日本語を話せる状態での就職を目指す。住居の手配なども用意するなど就職後の支援も重視している。関西国際空港を沿線に持つ強みを生かして将来的には年間で100人程度を紹介し、南海電鉄での採用も視野に入れているという。

鉄道は国内での事業活動が主力となるだけに、グローバルで事業展開する製造業などの業種に比べて外国人材の活用はあまり進んでいなかった。ただ、関西では25年の国際博覧会(大阪・関西万博)を前にインバウンドの回復が見込まれている。新型コロナウイルス禍や人口減などで主力の運輸事業が落ち込む中、語学力や多様な経験・視野を持った外国人材の活用は鉄道各社の今後の成長のカギとなるかもしれない。

(大竹初奈)