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GMO熊谷社長「職場で脱マスク、表情見えぬと負ける」 そこが知りたい

マスク着用を「必須」から「任意」にし、外す際の条件も付けない。政府も脱マスクを推奨するが、今も「屋内では人との距離が十分に確保でき、ほとんど会話がない場合」などとしている。9月20日に脱マスクへ移行した理由を熊谷正寿会長兼社長に聞いた。

――新型コロナウイルスの感染が収まらないなか、職場でのマスク着用を任意にしたのはなぜですか。

「GMOは2020年1月から在宅勤務体制を徹底するなど感染対策の先頭を走ってきた。ただ、マスク着用は弊害が大きい。顔や表情が見えずコミュニケーションの質が低下した」

「ビジネスは日々、戦いで瞬時の判断が重要だ。『目は口ほどにものを言う』というが、目だけでは本当に笑っているのかも分からない。微妙な表情の変化を読み取れないと経営判断が遅れる。世界中で脱マスクが進む中で『ヨーイドン』で勝負したら、負けてしまいかねないとの危機感があった。起業家の本能だ」

「脱マスクはウイルス学の専門家の意見を聞いて問題ないと判断した。アンケートで社員の意向を聞いたらパーティションがあるならマスク不要と6割が答え、実施に踏み切った」

――社内はどう変わりましたか。

「私は極力マスクを外している。約200人が参加するグループ全体の幹部会議でも『体調などの問題を抱えていない方は外してください』と呼びかけた。強制ではないが会議中は9割が外した。今は職場の4割ほどがノーマスクだ」

「素晴らしいアイデアは、顔をつきあわせて、腹を抱えて笑い合えるような環境で生まれる。まず私、そしてGMOの社員がマスクを外し、それが取引先にも広がっていくことを期待している」

――社内アンケートでは4割がマスクを外すことに不安を感じています。

「脱マスクは強制ではないし、社員を守るためのパーティションは残している。本当に感染が不安な人もいれば、マスクを外したら白い目で見られるのではと『マスク警察』を気にしている人もいるだろう。重要なのは、各自が『本当にマスクは必要なのか』を考えることだ」

――インフルエンザとの同時流行も懸念されています。本当に大丈夫ですか。

「パーティションを残したのは、インフルエンザや風邪が流行しやすい冬場に向かって最後の警戒感を維持する目的もある。感染状況を見つつパーティションの完全解除も検討したい」

くまがい・まさとし 1963年、長野県生まれ。国学院高を中退。91年ボイスメディア(現GMOインターネットグループ)を設立して代表取締役、03年から現職。59歳。

無料で食事提供、社員の交流促す

熊谷氏は東日本大震災を機に、事業継続計画(BCP)の策定に取り組んできた。毎年訓練してきたことで、コロナ禍でいち早く在宅勤務体制に移行できた。

一方で職場での密なコミュニケーションも重視してきた。BCPの策定を始めた頃から毎週金曜日の夜には、社員食堂でアルコール飲料や食事を無料で振る舞ってきた。社員同士が交流する機会を増やすためだ。

従業員の安全を守りつつ、いかにコミュニケーションの質を維持するか。熊谷氏が出した「脱マスク」の決断は、マスクを外せない日本社会に一石を投じている。(徐潮、伊藤威)