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NFT、取引17分の1に 楽天はスポーツカード9割売れ残り

最大市場の取引はピークの17分の1で、サッカーJリーグが楽天グループと始めたスポーツカードは9割が売れ残る。投機の値上がり期待が薄れる中、画像・動画だけでは所有のメリットを感じにくく、定着には特典など工夫が必要になりそうだ。

「販売期間終了」――。Jリーグが楽天と連携して今季始めた販売サイトはすべてのNFTが購入できなくなっていた。選手のプレー動画に1個あたり5000円前後の値をつけ、4月は発行分がすべて売り切れたが、5~6月分は約2010個中155個しか売れず92%が売れ残った。楽天は「当初設定した販売期間が終了した。今後の販売は未定」と説明する。

スポーツNFTは純粋なファンだけでなく値上がりに期待した購入者もいたとみられ、世界的にNFTの相場が下落し、投機目的の購入が減ったようだ。

PwCコンサルティングの菅原政規ディレクターは「NFTは投機目的の保有者ばかりだと長続きしない。特別な体験ができたりデジタル空間で自己顕示欲を満たせたり、メリットを提示してファンを巻き込む工夫が必要になる」と指摘する。

Jリーグでは今季、MIXIが動画配信のDAZN(ダゾーン)と連携した販売も始めた。480円から約3万円まで発行数が少ないほど価格を高くするなど工夫し、10月から転売できる取引市場も始めた。販売状況は非公表だが、MIXIの木村弘毅社長は「計画を超えて盛り上がっているわけではない」と話す。

プロ野球のパ・リーグがメルカリと組んで始めたサービスも、当初に比べて盛り上がりを欠く。4月にロッテの佐々木朗希投手が「完全試合」を達成した際は、540個用意した2万5000円のNFTは発売当日完売の種類も出るなど盛況だったが、その後ノーヒットノーランを達成した別の選手を含む多くのNFTは売れ残ったまま販売期間を終えた。

NFTは画像や動画などの持ち主をブロックチェーン(分散型台帳)で証明できる。希少性が出る「トレーディングカード」のデジタル版に近く、転売時の値上がりを期待した投機目的の購入が増え、2020年以降急速に広がった。

IT企業などこぞって参入

NFTで最初に注目が集まったのがアートの分野だ。21年3月に米国出身の画家がデジタル上で作ったアート作品が、6930万ドル(当時のレートで約75億円)で落札された。同月には米ツイッター創業者による最初の投稿のNFTには291万ドルの値がついたことが話題になった。

二次流通の取引の場としては、米ダッパー・ラボの市場「OpenSea(オープンシー)」が最も人気で、22年4月には単月で44億ドルの取引高を記録した。米メタの「フェイスブック」と「インスタグラム」ではNFTの投稿が一部可能になり、国内ではLINEやGMOインターネットグループがNFTの取引市場を始めた。

アイテムを作るクリエーターや、既に顧客やファンがいるコンテンツを持つ企業にとってはデジタルアイテムを手軽に販売する機会が広がった。これまでに米ナイキ、松竹、講談社など、幅広い企業が自社製品、キャラクターのNFTの取り扱いを始めた。

成長期待がある仮想空間「メタバース」との親和性も高い。NFTを使えば他のプレーヤーが持っていない希少なアイテムを用意できる。特にアバター(分身)用のファッションアイテムは人気が高い。

調査会社のMMD研究所(東京・港)が6月、NFTを保有したことがある人にジャンルを尋ねたところ、「スポーツ」が41%で「漫画・アニメ」「音楽・芸能」を上回り最も高かった。

特にスポーツNFTは新型コロナウイルス禍で試合観戦者が減り、主催者が収益化とファンとのつながりをつくる目的で始めたケースが多い。

米国では大リーグ、アメリカンフットボールなど主要スポーツが軒並み参入した。特に、米プロバスケットボールNBAの「トップショット」は、ランダムに選手の動画が当たる仕組みだ。転売市場では23万ドルで売買されたケースもある。

しかし、このトップショットでも22年に入って人気に陰りが見える。公開データを集計した所、月間取引高は21年2、3月の2億ドル超をピークに下降し、9月は632万ドル前後と35分の1近くになった。

鳴り物入りで参入した各社のNFTが思うように売れていないのは投機の一巡が大きい。世界最大市場のオープンシーの月間取引高は9月に2億ドル台と1月の17分の1に縮小した。

「幻滅期」経て定着見定め

背景にはNFTの仕組みを支える暗号資産(仮想通貨)の価格下落もある。基盤の一つであるイーサリアムの価格は22年に入り大きく下落した。一時は1000ドルを割り込み、ピークの5分の1となり足元は1200~1300ドルで推移する。

NFT全体でも過熱気味だった値上がり期待はしぼみつつあり、291万ドルで落札した「初ツイート」も4月の競売では数千ドルの入札しかなかった。10月には米CNNがNFTサービス開始からわずか1年弱で終了すると発表した。

米ガートナーは先進技術トレンドの指標として公表する「ハイプサイクル」ではNFTは「過度な期待」から「幻滅期」に入るとみる。

あるIT(情報技術)企業の担当者は「最近は投機目的の購入が減ってファンが増え、ある意味正常な状態になった。特典などでファンに所有の価値を伝えられるかが重要だ」と指摘する。

参入のしやすさから各社が一斉に参入したNFT市場だが、淘汰を経てどういった種類のコンテンツとして定着していくのか、企業や消費者は見定めていくことになる。(伴正春、水口二季、松元則雄)