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住居費減で選択後押し LIFULL(ライフル)社長 井上高志氏

結婚の必然性が薄れてきた。配偶者や子供に合わせるより一人で気ままに生きたいという価値観の人が増えている。都市化と経済発展がもたらした必然的な結果だろう。少子化、未婚化が進む中でGDP(国内総生産)をいかに伸ばし続けるかという議論もある。しかし人々が幸せになるための経済発展であり、GDPを伸ばすこと自体を目的にしてはならない。

大切なのは社会、地球環境とともに個人がウェルビーイング(主観的に幸福)になること。1人ひとりが主体的に自分の人生を決めていける、選択の自由がある社会を実現したい。今は多くの人が「○○しなければいけない」という社会システムの枠や既成概念に縛られて生きている。

結婚したくなければしなくていい。同性婚、血縁にこだわらない「拡張家族」という選択肢もある。経営者として、人々がどのような選択肢を選んでも自分らしい生き方ができる環境を後押ししたい。

カギとなるのが地方での自律分散だ。モノやサービスを生産するコストが極限までゼロに近い「限界費用ゼロ社会」をつくりたい。不可能と思うかもしれないが、電力会社に頼らない「オフグリッドテクノロジー」の進化によって可能だ。身近な太陽光や風力などの自然エネルギーを電力に変え、エネルギーを自給自足する生活が基礎になる。

太陽光パネルや水の再生装置を導入する初期費用はかかるが、住み始めた後は水道・光熱費がほぼかからない。年収百万円ほどで十分豊かに暮らせるようになれば、経済的な理由で2人目の子供を諦めていた人がもう1人欲しいと思うかもしれない。複数の企業や自治体と栃木県那須エリアにある東京ドーム170個分の私有地を使い、社会実装に向けた実証実験をする。

サラリーマンの生涯年収平均は2億5千万円で、うち40%が住宅ローンや家賃など住まいにかかる費用だとされる。この負担割合を3分の1、5分の1と徐々に減らしていくために空き家や遊休不動産を活用したい。

シェアハウスや働く場所を併せ持つ拠点を全国に50カ所ほど整備し低額で泊まれるようにした。移動に関しては米Zoox(ズークス)が、サンフランシスコで自動運転の電気自動車(EV)により乗車料金無料のビジネスを立ち上げようとしている。そうした事例を参考にしたい。

諸々の制度も人生100年時代に合わせて見直す必要がある。結婚で必ずどちらかの姓を選ぶことや一度結婚したら絶対離婚しないことを理想化する考え方で縛るのは良いのか。相続において嫡出子と非嫡出子とで額が違う。同性カップルは世帯合算年収で評価してもらえず、住宅ローンが組みにくい。

とはいえ「しなければならない」という思い込みから抜け出せない人もいるだろう。高校生のうちからライフスキル教育をやった方がいい。まず自分がどうありたいか、何をやりたいかを高校生のうちから考える機会を教育の場に持ち込みたいと考えている。

(聞き手は編集委員 大岩佐和子)