マンションの所有者は毎月、修繕積立金を支払う必要があります。戸建ての持ち家に住む場合はこうした負担を課せられることはありませんが、だからといって修繕自体が不要なわけでもありません。マンション住まいと同様に、修繕に必要な費用を計画的に準備しておく必要があります。
雨漏りは戸建ての大敵
マンションの修繕積立金の多くは「大規模修繕」に充当することが想定されています。大規模修繕はマンションの資産価値などを維持するための工事です。12年や15年ごとなど、定期的に行うのが一般的です。マンション全体の外壁やバルコニーの補修、屋上の防水工事などで特に大きな支出を伴います。
戸建ても資産価値などを維持するためには「大規模修繕」が必要です。マンションと同様に、屋根や外壁の防水塗装が主な修繕工事となります。柱などの主要な構造部分に木材を使う木造住宅だと、雨漏りで水分が染み込み続けることで構造上重要な木材が腐食してしまう場合があります。また、木材を食い荒らすシロアリは湿っていて暖かい場所を好むため、雨漏りがシロアリの食害の原因となることもあります。
外壁などの内側に入っている断熱材が正しく施工されていないと、雨漏りなどで湿ったままになってしまいます。そうなると断熱性能が落ちるだけでなく、断熱材に接触する柱などが腐食したり、カビが大量発生して住む人の健康を害したりすることもあります。
見えない雨漏りが問題に
雨漏りがやっかいなのは、室内に形跡がなくても屋根裏や壁の中に水分が染み込み続けているケースがあることです。実は室内から気づくほど雨漏りの症状が現れているころには、壁の内側や柱や梁(はり)といった屋根裏の構造部分には水分がたまっていて腐食が進行しており、建物を支えるだけの耐力が失われていることもあるのです。
定期的にメンテナンスをせず雨漏りを放置すると柱や梁、土台(コンクリート基礎の上に載っている角材)の交換が必要なほどの大工事をすることにもなりかねません。その場合の工事費用はメンテナンス費用とは比べものにはならないほど高額になる可能性があります。
月1万円程度の積み立てを
こうした問題を発生させないためには定期的なメンテナンスが有効とされています。立地や構造、形状などで異なりますが、屋根や外壁は一般的に10年から15年ごとに防水塗装工事などを行うとよいとされています。費用もまちまちですが、一般的な規模の戸建てならば150万~200万円程度で施工可能だと思います。
一度にこれだけの金額を用意するのは大変です。ただ、仮に防水塗装工事を行うのが15年に1度ならば、1カ月に1万円強の積み立てで必要な時期に資金をためられます。
中古戸建てのメンテナンスは?
中古の戸建てで屋根や外壁の防水塗装工事をタイムリーに行っているケースはそれほど多くありません。中古の戸建てを買って長く大事に使いたいとお考えであれば、屋根や外壁の防水塗装工事は購入直後に行うつもりでいたほうがよいでしょう。購入する際は150万~200万円程度の追加予算を確保しておいたほうがよいことになります。
また、前の所有者がどのようなメンテナンスを行ってきたのかを確認することも大事です。もし5年前に屋根や外壁の防水塗装工事を行っていたなら、購入後10年はメンテナンスの必要がないかもしれません。住宅の状態が不安であれば、必要に応じて現在の劣化状況や修繕すべき時期などについてホームインスペクター(住宅診断士)などの専門家からアドバイスを受けるのもよいでしょう。
メンテナンスで100年後も使用可能に
水分の浸入を防いで乾燥している状態を維持すれば、木造住宅の軀体(くたい)は100年経過しても使えるといわれています。日本では木造住宅が耐久消費財のように扱われ、維持管理を行わないのが一般的になった結果、20年で価値がなくなってしまう状況に陥ってしまったのだと筆者は考えています。木造住宅を長く使うためにも、その価値を維持するためにも、毎月1万円の修繕積み立てを検討してみてはいかがでしょうか。

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