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電気代支援1月にも ガス代も軽減、与党合意

政府は電気料金の軽減策を2023年1月にも始める。エネルギー価格の高騰の影響は低所得者層ほど負担感が重い。一律の支援では財政支出が膨らむ懸念もあり、メリハリのある対策が重要になる。

10月中にまとめる総合経済対策に盛り込む。会談では電力小売事業者を通じて「毎月の請求書に直接反映するような形」で支援すると確認した。

首相は軽減の度合いについて「来年春に想定される電気料金の上昇による平均的な負担増に対応する額」と説明した。政府内には23年春以降さらに2~3割値上がりするとの見方がある。首相は大幅な値上げが予想される来年春を待たず、1月以降、できるだけ早く導入する考えも示した。

ロシアによるウクライナ侵攻や円安の影響で液化天然ガス(LNG)の調達コストは高止まりしている。火力発電の燃料や都市ガスの原料になるため、電気とガスの両方の価格が上昇している。電気代は既に足元で前年より2~3割上がった。

ガス料金については値上がりの動向などを踏まえて「電気とのバランスを勘案した適切な措置を講じる」ことで一致した。東京ガスによると都内の標準家庭の都市ガス料金は22年11月分で6461円と前年同月から3割ほど高くなる。

こうした料金上昇で家計の負担は増している。家計調査で2人以上世帯の電気やガスなどエネルギーへの支出をみると、消費支出に占める割合は4~8月平均で5.9%だった。前年同期に比べ0.8ポイント上昇した。金額にすると月平均で2800円増えた。

世帯収入別でみると収入の低い世帯への影響が顕著だ。家計調査では世帯を年収別に5分類しており、低収入世帯(年収329万円以下)の消費支出に占めるエネルギー代の割合は8.1%で、前年同期から1.1ポイント上昇した。高収入世帯(同882万円以上)は0.5ポイント上昇の4.4%にとどまっている。

限られた財源で政策効果を高めるには、影響の大きい層に的を絞る視点も欠かせない。

制度を設計する際にも課題が多い。首相は「急激な電気料金の値上がりによって影響を受ける家計と企業を直接的に支援する」と述べてきた。ただ形式としては各世帯などへの給付金でなく、経済産業省では電力小売りや都市ガス会社に料金抑制の原資を配り、料金を下げる方式を中心に検討が進む。

事業者を通じて消費者全てを支援するガソリン補助金に近い仕組みになる可能性もある。世帯所得や企業の業績によって支援額に傾斜をつけるのは難しい。

財務省はガソリン価格の抑制のため石油元売りに配る補助金事業で「販売価格に補助金の全額が反映されていない可能性がある」と予算執行調査で指摘した。抑制に使われた金額は支給総額を110億円下回っていたと推計されるという。

党首会談ではガソリン価格の抑制のために支給している補助金は、23年1月以降も補助の上限を調整しつつ延長することも合意した。円安の進行などによっては補助が拡大する可能性がある。

22年1月に始めたガソリン補助金は既に予算措置が3.2兆円に上り、財政支出が膨らんでいる。会談で「段階的に縮減する」ことで合意したが、時期は見えていない。今回の対策で電気、ガス、ガソリン、灯油などエネルギー全般にわたって負担を軽減することになる。全体の支援をどう終わらせるか、出口戦略も示す必要がある。