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「虎の子」住宅ローン争奪戦 「市場食い荒らされる」 マンション高騰の果て(4)

「当行ならスピーディーに審査・契約できる」。三重県を地盤とする地方銀行、百五銀行が7月に開いた愛知県の住宅ローン拠点。在籍する行員は不動産会社に足しげく出向き、マンションなど住宅の購入希望者に自行を紹介してもらえないかと営業をかけている。

百五銀は2022年に愛知県内だけで住宅ローンの拠点を3カ所つくったほか、担当者を60人増やした。頭取の杉浦雅和は「愛知県内のシェアは低い。まだまだ(開拓の)余地がある」と話す。同県のある金融機関の幹部は「異常な金利の低さで市場が食い荒らされている」と危機感を募らせる。

少子高齢化や新型コロナウイルス禍などを受けて地元企業の資金需要が細るなか、地銀にとって住宅ローンは安定した利益をもたらす「虎の子」ともいえる。百五銀も収益の柱になっており、全体の貸出金残高の4割を占める。住宅ローン争奪戦は各地で起きている。

千葉県流山市にあるつくばエクスプレス・流山おおたかの森駅の改札口を出ると、建設中を含む多くのマンションに加え、銀行の看板が目に入る。千葉銀行京葉銀行など地元3行のほか、三井住友銀行や茨城県地盤の常陽銀行も店舗を構える。

「駅周辺の物件価格は5年ほど前の1.5倍になった」。京葉銀・流山おおたかの森支店長の大関学は共働きの子育て世帯からの人気が高く、需要が供給を上回っていると指摘する。資産価値の上昇が期待され、それがまた購入希望者を引き寄せて住宅ローンの利用につながる循環が生まれている。

今後の焦点は金利動向だ。日銀の低金利政策が続き、住宅ローン金利は歴史的な低水準にある。銀行が扱う変動型は1%を下回り、住宅需要を支えてきた。主要国が相次ぎ利上げに動くなかでも日銀総裁の黒田東彦は「当面、金利を上げることはない」と、大規模緩和策を維持する方針を示す。

もっとも、金利の先高観は着実に広がっている。住宅金融支援機構の4月調査では、1年後の金利見通しを「現状よりも上昇する」と答えた住宅ローン利用者が約4割と、前回調査(約2割)から大幅に増えた。変動型は金利が上昇しはじめると返済負担が重くなる。貸し倒れリスクが高まり、地銀経営の重荷になりかねない。(敬称略)

原欣宏、山口和輝、桜井芳野、内山千尋が担当しました。