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ゴールドマン、日本の個人に非上場商品 外貨資産へ誘導

ファンドの顧客を機関投資家から個人に広げることで新たな収益源に育てる。日本では物価上昇と低金利継続で現預金の価値が目減りしている。外資系各社には個人マネーを海外金融資産に呼び込む狙いがある。

ゴールドマン資産運用部門の共同責任者、ジュリアン・ソールズベリー氏が日本経済新聞の取材で明らかにした。同社の運用総資産は3月末時点で約2兆7000億ドル(約390兆円)。上場株や公募社債など伝統的資産の運用から、プライベートエクイティ(未公開株)や非上場のREITといったオルタナティブ(代替)投資まで幅広く手がけている。

ゴールドマンは公募投信の形で非上場REITと、企業に融資を提供する「プライベートクレジット(非公開融資)」ファンドを販売する計画だ。同社はすでに日本国内の証券会社を通じて上場株投信を提供しており、今回もその販売網を活用する。

新商品の投資対象は流動性の面で上場株などに劣るものの、期待リターンは高めだ。ソールズベリー氏は「日本の個人は多くの現金を抱えており、利回り型商品に資金を振り向ける余力は大きい」とみる。

非上場REITやプライベートクレジットといった代替投資ファンドは従来、年金や保険会社といった大手機関投資家向けだった。募集期間が決められており、いったん投資すると売却も難しいためだ。米金融各社は代替投資を個人に広げるため、定期的に購入できたり、解約できたりする商品に仕立て直している。ゴールドマンも米欧で展開する商品を日本に持ち込む計画だ。

他の外資系金融も代替資産ファンドの販売先として日本の個人に照準を合わせる。米大手投資会社ブラックストーンは野村ホールディングスと組み、日本の個人投資家向けに非上場REITの提供を始めた。今後は未公開株ファンドなど品ぞろえを増やす方針だ。米アポロ・グローバル・マネジメントも三井住友トラスト・ホールディングスとの協業を通じて、個人向け商品の提供を検討する。

日本の個人金融資産約2000兆円のうち、約54%を現預金が占める。日銀は金融緩和を維持しており、物価上昇が続けば現預金の価値は一段と目減りする。世界的に景気後退の懸念もくすぶるなか、株式などリスク資産に資金を振り向けにくい。日本の個人マネーは海外資産への関心を強めており、外資各社は不動産やクレジットファンドといった安定利回り商品を売り込む好機とみている。

個人への販路の拡大は、ゴールドマンの成長戦略とも合致する。同社は資産運用部門を強化し、資産残高に応じて得られる手数料を収益の柱にしようとしている。M&A(合併・買収)助言や新規株式公開(IPO)の引受業務を手がける投資銀行部門、株式や債券の売買を仲介するトレーディング部門にも強みを持つが、業績が市況に左右されやすい。

米株式市場では金融機関を評価する際に、運用資産残高に応じた手数料を重視する傾向が強まる。ゴールドマンも運用部門を成長の柱にすることで、ライバルのモルガン・スタンレーなどに比べて低くなりがちだった評価の底上げを狙う。

ゴールドマンは4月にはオランダ拠点の運用会社NNインベストメント・パートナーズの買収を完了した。ソールズベリー氏は、運用業界は顧客からの手数料の引き下げ圧力にさらされる一方、「テクノロジーや業務運営、コンプライアンス、法務への投資が必要になっている」と語った。資産規模を大きくすることで費用を吸収し、高い利益率を維持したい考えだ。

代替資産の運用でも規模を追求する。資産運用部門の総資産のうち、代替資産への投資額は約4450億ドルと2割弱を占める。ソールズベリー氏は「(ファンド新規設定などを通じて)現在、40種類以上の資金調達に取り組んでいる」と明かした。目標達成に向けて日本でも個人向けの拡販をめざす方針だ。

(宮本岳則)