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マンション「買えるのは富裕層の特権か」 悩む中間層 マンション高騰の果て(2)

「買えるのは一部の富裕層の特権なのか」。横浜市の賃貸マンションで夫と4歳の娘と暮らす会社員、三輪尚子(仮名、38)はため息をもらす。数年前から都心近郊でマンションを探してきた。上限の目安にする6000万円台を超える高額物件が増え、検索サイトを眺めては焦燥感を募らせる日々を送る。

10年以上かけて頭金として1500万円をためてきたが、物価高でガソリン代や食費などの生活費が1割上がり、「購入後も安定した生活を送れるか不安も大きい」。夫は飲食業、三輪自身は2020年7月まで旅行サービス業で働いていた。新型コロナウイルス禍で休職要請を受けた経験もある。「この高騰局面で飛び込めない」と話す。

日銀の異次元緩和が始まった13年から日経平均株価は9年で約2倍、東京23区の基準地価も5割上昇した。富裕層が株式や不動産投資で資産を増やす一方で、まとまった資金を投資に向けられず、貯蓄頼みだった中間層が割を食っている。

内閣府によると、この9年間で雇用者報酬は物価などを反映した実質ベースで8%増にとどまっている。足元の急速なインフレで、22年4~6月期は前年同期比1.2%減のマイナスになった。資産価格の上昇の恩恵にあずかれなかった中間層にはインフレの影響がきつく、マンションには手が届きづらい。

「中古マンションすら高騰し、手を出しにくい」。埼玉県で食品メーカーに勤務する今永卓也(仮名、28)は言う。年収は500万円。趣味のバイクやキャンプにもお金を使いたい今永が選んだのが中古戸建て。今夏、リフォームした築37年の一軒家を1200万円で買った。ローン返済額の負担も少なく、「部屋も広くよかった」と言う。

リクルートが21年に首都圏のマンション契約者に実施した調査で「資産をもちたくて購入した」と回答した人の割合は29.1%と、15年前から約2倍に増えた。世帯年収が1500万円を超える共働き世帯「パワーカップル」である沢木詩織(34、仮名)は20年9月、東京都文京区で3LDKの新築マンションを7500万円で購入。「暴落する前には売りたい」と話す。

SUUMO新築マンション編集長の柿崎隆は首都圏のマンションについて「将来不安から資産防衛で購入する人が多い」と話す。住む対象から投資対象になったマンションは、資産を持つ者と持たざる者の格差の広がりを映している。(敬称略)