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膨らむ修繕工事費 マンション購入後も負担重く 住宅問題エディター 堀大介

東京カンテイ(東京・品川)が各竣工年で、首都圏において新築時に定めた積立金を調べると、2021年は10年前より4割弱高かった。前年比こそマイナスだが、「積立金が高額な富裕層向けマンションがたまたま少なかった影響で、上昇傾向は変わらない」(井出武・上席主任研究員)。

 

要因は修繕工事費の上昇にある。12年ごろから人手不足を背景に値上がりが目立ち、分譲当初から毎月の積立金や新築分譲時に集める積立基金も増やすケースが出てきた。これだけでも負担感は大きいが、21年の水準でも国土交通省がマンション修繕の積立金の目安として示すガイドライン平均値(小規模物件、1平方メートル当たり月335円)には及ばない。ガイドラインは近年の工事費上昇も一部考慮に入れて21年に改定された。未達のマンションは将来さらに増額を迫られかねない。

「第三者管理」も選択肢だが…

積立金不足などの難題が増える中、マンションの一部は高齢化が進み、世帯主ベースでは半分近くが60代以上というマンションも多い。最近は理事会の役割まで外部専門家に任せる「第三者管理」が注目される。16年、国が定める管理規約の「ひな型」などが改正されてルールが整い、関心が高まった。ただ、さくら事務所(東京・渋谷)の土屋輝之マンション管理コンサルタントは「第三者管理でコスト削減が進むことは通常、考えにくい」と話す。

第三者といっても今は管理会社が従来の管理実務に加え、理事会の役割も引き受ける方式が目立つ。理論上、新たな役割も果たす分の『対価』は発生する。積立金増額に加え、このコストも加われば所有者負担は増す。

一方、「『プラスオンのコストは軽微もしくは不要』という提案も、慎重にみるべきだ」(土屋氏)。確かに管理会社側は、週末などの理事会に社員が出る必要がなくなるなど業務効率化が見込める。ただ、そうした省力化だけで広範な理事会業務まで引き受ける負担を吸収できるのかは不透明だ。

結果的に「日常的な管理コスト、大規模修繕工事費で管理会社側に有利な内容となっており、そこでコストを回収している懸念が残る」(土屋氏)。費用チェックなどのために別の専門家を雇う手法も採用し得るが、その対価も新たに生じる。

第三者に任せた場合、管理組合にはコスト削減や積立金増額のノウハウが蓄積されないかもしれない。土屋氏は「現在のコスト増は構造的で、手軽な解決策はない。まして第三者管理で経験が乏しい所有者ばかりになると、対応はさらに困難だ」と話す。

[日経ヴェリタス2022年10月9日号]