成人年齢が18歳に引き下げられてから10月1日で半年。18、19歳が、保護者らの同意がなくても契約を結べるようになり懸念されているのが、悪質商法の被害だ。各地の消費生活センターへの相談数に大きな変化はないが、被害を自覚していないケースや、電話相談が原則のため被害が表面化しづらいとの指摘もある。専門家は相談しやすい態勢づくりを求める。
民法には、保護者らの同意なく未成年者が結んだ契約を解除できる「未成年者取り消し権」があるが、成人年齢引き下げにより18、19歳はこの権利で守られなくなった。
国民生活センターによると、2022年4~8月に18、19歳から全国の消費生活センターに寄せられた相談は3396件で前年同期と同程度。ただセンターへの相談は電話が原則だ。SNS(交流サイト)でのやりとりが主流の若者は電話を敬遠しがちとも指摘され、実態を反映しているとは限らない。担当者は「引き続き注意したい」と警戒する。
若者を悪質商法から守り、成人の自覚を促そうという取り組みは各地で広がる。第二東京弁護士会は今年、成人年齢引き下げをテーマに高校への出張授業を実施。生徒に仮想の不動産契約を締結してもらったり、消費者トラブルの実例を紹介したりした。担当者は「消費のリスクだけでなく、環境に配慮した商品の購入など、社会問題解決に役立つポジティブな消費があることも理解してもらいたい」と話す。
消費者教育に詳しい日本女子大の細川幸一教授は5月、大学1、2年生の意識を調査。18、19歳もクレジットカードを契約できるようになったことは95%が知っていたが、未成年者取り消し権が使えなくなることの認知は65%にとどまった。
細川氏は、社会経験の少ない若者は提示された金額が妥当かどうか分からないなど、そもそも被害に気付かないことがあると指摘。悪質な業者に巧妙に、数万円ほどの「何とか払える額」をだまし取られ泣き寝入りすることも少なくないという。
体験型授業など、知識を詰め込むだけでない消費者教育が重要だとした上で「学校など身近に消費生活センターを設け、相談しやすくすべきだ」と話している。

コメントをお書きください