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ETF、低コスト競争過熱 ブラックロックが先行 国内勢は利益確保に苦慮

ブラックロック・ジャパンは6月に日経平均株価に連動するETFの信託報酬を半分にし、野村アセットマネジメントも9月に引き下げた。地銀や保険会社などが低コストのETF運用にシフトしているためで、利益を削ってシェアを優先する運用会社の苦境が深まっている。

 

「ここまで下げてくるとは」。ある銀行系運用会社の担当者はブラックロックの動きに警戒を隠さない。6月に日経平均連動型ETFの信託報酬を0.1155%から0.0495%、JPX日経インデックス400連動型は0.1265%から0.0495%と半分以下に下げた。ETFを扱う運用会社の収入源である信託報酬の下げで攻勢をかける。

国内勢では野村アセットマネジメントが日経平均連動型の信託報酬を0.198%から0.12782%に下げたほか、三菱UFJ国際投信は東証REIT(不動産投資信託)指数連動型や米S&P500種株価指数連動型を引き下げた。

背景には、地銀や生保といった機関投資家のETFシフトがある。ETF全体の純資産総額は9月末で58兆円と、世界的な株安・金利上昇で1年前より1割弱減ったものの、3年前よりは5割弱多い。従来、ETFは大口の買い手である日銀の影響が大きかったが、このところは地域金融や保険会社などの売買が目立つ。日銀保有分を除くETFの純資産総額は10兆円前後とみられる。

ある関東の信用金庫は21年から本格的にETFを使い始めた。ETFは上場株式のように価格をリアルタイムで確認でき、瞬時に取引できる。信金の運用担当者は「信託報酬の低さに加え、売り買いしたいタイミングで取引できるのは大きい」と話す。世界的な金融引き締めで市場の不安定さが増しており、ETFの取引価値が高まる。

地銀や信金はこれまで東証株価指数(TOPIX)などに投資する際に指数に連動した機関投資家向けの私募投信を購入するケースが多かった。ただ、私募投信は時価の算出が一日一度に限られる。信託報酬もETFより割高だ。九州の大手地銀は米国株に連動する私募投信は「米国時間の価格変動リスクが大きい」として、低コストのETFの運用を増やしてきた。

ETFの魅力を高めるために、運用会社は商品の多角化も進めている。野村アセットは9月、米国株と米国債券に投資するバランス型のETFの取り扱いを始めた。S&P500種株価指数に25%、米国債の7~10年物指数に75%を配分する。バランス型は投資信託では一般的だが、東証に上場するETFでは初になる。「運用担当者の少ない地域金融機関などからひとつの商品で分散投資できるETFを望む声が多かった」(ETF事業戦略部)

機関投資家にとってETFの利用価値は高まる半面で、運用業界は消耗戦の様相を呈す。ある運用会社は「ETFの信託報酬は純資産残高を伸ばすという前提で下げている。残高が横ばいなら赤字だ」とこぼす。

信託報酬の引き下げ競争で一歩先を行くブラックロックは世界で8.5兆ドル(約1200兆円)を運用する世界最大の運用会社だ。規模では国内勢が束になってもかなわない。ETFが主戦場の一つになるなかで、体力勝負をどこまで続けるか。運用会社は難しい判断を迫られている。

(湯浅兼輔)