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為替トレンド 転換点なるか 円安一服感、介入を警戒 1ドル145円を「強烈に意識」

一方、米国ではドル高によるグローバル企業の収益悪化懸念などが顕在化し強いドルがもたらす「負の影響」について議論が活発だ。為替市場の潮目の転換点になるのか注目が集まる。(佐伯遼、ワシントン=高見浩輔)

 

 

 

外国為替市場で対ドルの円安一服を見込む声が増えつつある。政府・日銀は9月22日に24年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入を実施した。市場では為替介入した1ドル=145円が節目として意識され、オプション市場では円安への備え以上に、急な円高に対して警戒が強まっている。これまで円を売ってきた個人投資家が145円で買い戻す注文も膨らんでいる。

「145円が強烈に意識されていますね」。ある市場参加者は話す。5日の東京外国為替市場で円相場は1ドル=143円台半ばと9月26日以来1週間半ぶり円高水準に上昇する場面もあった。3日昼には一時1ドル=145円40銭と介入後の安値を付けたものの、わずか10分間で再び144円台に戻された。その後再び145円台を付けたものの、定着せず144円台に押し戻された。

円の先安観後退は通貨オプション市場の需給に映っている。円を売る(円プット)需要から円を買う(円コール)需要を差し引いた「リスクリバーサル」をみると、3カ月物はマイナス1%程度。マイナスは円売りの需要より円買いの需要が大きいことを示す。21年の平均がマイナス0.5%程度で、足元の水準はそれより円買い需要が強いことを示す。

9月中旬までは円売り需要の方が強かった。それが14日には日銀が為替介入の前段階とされる「レートチェック」を実施、22日に実際に為替介入に動いたことで、オプション市場では円高・ドル安に備えて円コールの需要が強まった。

さらに144円台後半に集まる円買い注文も一方的な円安を阻んでいる。海外投機筋のみならず、「FX(外国為替証拠金)取引を手掛ける国内個人投資家も145円より先の円安は進みづらいとみて、多くの円買い注文を入れている」(国内FX会社)という。

為替介入に対する警戒感も高まっている。円相場が145円近辺で少しでも大規模な円買い注文が入ると市場参加者が「為替介入か」と反応し買いが買いを呼ぶ展開となりやすくなっている。人工知能(AI)などを活用したアルゴリズム取引もこうした動きを増幅しているとの指摘もある。

政府は介入の理由を「急激なボラティリティー(変動率)の高まり」と説明する。ただ日銀の黒田東彦総裁の記者会見中に円安・ドル高が進み、1ドル=145円90銭に達した「水準」が為替介入のトリガーだったとみる市場参加者は多い。

もっとも、「今は介入効果で落ち着いているものの、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ姿勢が崩れるとも思えず、1ドル=150円まで円安が進む可能性は十分にある」(シティグループ証券の高島修チーフFXストラテジスト)。中長期的にはファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)面での円安圧力の強さを指摘する声は多い。

いったん円の先安観が後退したことで市場参加者のポジションは軽くなっている。インフレが長引きFRBの利上げが23年以降も続くなど円安圧力が再燃した場合、想定を上回る勢いで円安・ドル高が加速する可能性も市場で意識されつつある。