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メガ銀、デジタル世代争奪 みずほ、楽天証券に出資 ネット企業に急接近

みずほフィナンシャルグループ(FG)が楽天証券に出資する方針を固めたことで、メガバンクとネット企業の融合が一段と加速する。金融のデジタル技術が進化して新勢力が台頭するなか、メガバンクはネット企業との連携でデジタルネーティブ世代の取り込みを急ぐ。メガバンクにのみ込まれまいとしたたかに立ち回るネット企業との駆け引きも活発だ。1面参照)

「(ネット上でサービス基盤を提供する)プラットフォーマーの経済圏は面で押さえる」(みずほ首脳)。みずほはソフトバンクとの共同出資会社PayPay証券に49%出資し、LINEとも銀行開業を目指している。さらに楽天証券への出資を固めたことで、デジタル経済圏に点ではなく「面」で接近する戦略が完成に一歩近づく。

みずほを動かしたのが、金融の主戦場がネットに変わりつつあることへの危機感だ。2001年に開業した楽天銀行の口座数は1300万を超えた。PayPayやLINEといった大手プラットフォーマーも決済やSNS(交流サイト)から金融サービスまで若年層に深く食い込み、無視できなくなっていた。

6月に三井住友FGがSBIホールディングスへの出資を発表したことも、みずほの焦りを強めた。三井住友とSBIはスマホ世代の顧客に銀行、証券、カードなどの一体的な金融サービスを提供する準備を急いでいる。三井住友FGの太田純社長は「デジタルネーティブに対応するため徹底的にデジタル化を進める。だからこの分野で一番強いSBIと提携した」と語っていた。

メガバンクにとって、若いうちからスマホで資産形成に取り組む世代を取り込めるかは死活問題だ。グループ傘下の中核証券会社は高齢者や富裕層を中心に手厚いコンサルティングサービスを展開するが、若年層との取引は少ない。デジタルネーティブ世代の求めるデザイン、操作性でもネット証券に軍配が上がる。

三菱UFJFGは傘下のauカブコム証券を通して若年層への接近を図っている。21年12月にはスマホで幅広い金融商品を選んで投資できるプラットフォーム「マネーキャンバス」をグループをあげて立ち上げた。3メガバンクがデジタル経済圏への足場作りを競う状況となっていた。

メガバンクと組むネット企業もしたたかだ。楽天証券もSBIもメガバンクからの出資は1~2割にとどめ、主導権は渡さない構え。その一方で、大手銀行の手厚い顧客基盤へアクセスし、規制対応などのノウハウも取り込もうとしている。

メガバンクの信用力、資金力も魅力的だ。急速に口座数や預かり資産を増やすネット証券だが、激しい競争で収益環境は厳しい。楽天証券の経常利益も21年1~3月期の59億円が直近のピークで、22年4~6月期は36億円にとどまった。

投信販売で得る収益の落ち込みなどが理由だ。人気の指数連動型の投信は手数料が低い。ポイント還元の負担に耐えられず、楽天証券は4月にポイント付与率を一部引き下げた。政府は「貯蓄から投資」を後押しするが、手数料率の上限が決められているつみたてNISAの利益は薄い。

あるネット証券の関係者は「つみたてNISAは顧客獲得の入り口にはなるが、ほかの取引に誘導しないともうけにならない」とこぼす。

大手金融もネット企業もそれぞれの思惑で手を取り合い、金融地図は大きく変わりつつある。買い物から預金、決済、資産運用と切れ目のないサービスが提供できれば利便性も高まり、ポイント還元のメリットも得やすい。一度囲い込んだ顧客がなかなか離れないデジタル経済圏ではスピードが勝負を決める。メガバンクが将来も金融の中心であり続けるためには、フィンテック並みの身軽さも求められる。

(五艘志織、湯浅兼輔)