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米欧で終わる低金利 通貨危機は再来せず 三菱UFJ信託銀行社長 長島巌氏

――米欧の金融引き締めが経済と市場に及ぼす影響をどう見ますか。

「各国が相次ぎ政策金利を上げて物価抑制を優先する姿勢を鮮明にしたため株式市場などは当面、不安定になり、世界経済は来年にかけて減速する。ただ、ある程度物価を制御できれば金融引き締めは終わる。米景気が軟着陸するかは不透明だが、2008年のリーマン危機後のような不況に陥ることはないだろう」

「これまで低金利で世界中にあふれていたマネーが金利が上がる米国に回帰している。新興国経済にとってはリスクだが、1990年代後半のアジア通貨危機の再来とはならない。当時の教訓から外貨準備を厚くして備えた国が多く、貿易構造も当時とは変わった」

 

分散投資を継続

 

――世界中でインフレが深刻になっています。

「現在のインフレの背景にはウクライナ危機に伴う資源高や物流の混乱、人手不足がある。これらの問題は時間がたてば調整されていく。資源高を起点に賃金高・物価高のスパイラルに陥った1970年代のような状況にはならない」

「機関投資家として内外に分散投資する方針を変えるつもりはない。当面は値動きが荒くなっても、長い目で見ると分散投資のメリットが大きいことを投資家は経験から学んだ。プライベートエクイティ(PE)や不動産など株式や債券以外のオルタナティブ(代替)資産投資も広げる」

――為替市場は24年ぶり円安・ドル高です。

「今のドル高は米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めに伴うものだ。FRBは金利引き上げが来年半ばに一服する見通しを示しており、シナリオ通り進めばドル高も落ち着く。1ドル=150円を超える円安にはならないだろう。円相場の水準は1990年代後半と同じでも、グローバルな景気低迷で金融緩和局面だった当時とは違う」

 

円安を奇貨に

 

――円安の背景は日米の金利差です。

「FRBは景気を多少犠牲にしてもインフレ鎮圧のため金融引き締めを優先する一方、日銀は金融緩和を続ける姿勢を明確にした。来年央まで日米金利差が広がることを市場は織り込んでいる。日本は米欧と比べコロナからの経済再開が遅れたため、まだ投資余力がある。景気の落ち込み幅は海外より小さいだろう」

「日本は円安を奇貨としてインバウンド消費や対日投資を促す取り組みを強化すべきだ。住宅ローンなどで個人負債が膨らんでいたリーマン危機後と異なり、景気減速下でも個人のバランスシートは健全だ。多くの国がコロナ対策で個人向け給付金など財政を拡大したため貯蓄率が上がり、消費を支えている」

――ウクライナ危機を経て環境問題への投資家の姿勢に変化はありますか。

「欧州はエネルギーのロシア依存が表面化した。ドイツは原発の稼働を延長し、一部の国は石炭輸入を再開した。ただし脱炭素の大きな流れは変わらない」

(聞き手は編集委員 吉田ありさ)

 

ながしま・いわお 運用部門が長く、リーマン危機時は証券投資部長。59歳