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協働・挑戦する力伸ばせ NTT相談役・篠原弘道氏

企業も国も従来の延長線上では成長できない。社会課題の解決や新しい価値の創造が求められるが、一つの専門領域では不可能だ。様々な背景や価値観、専門性を持った人々と協働しないと答えを出せない。

大学でこうした力を育む機会の一つは卒業研究や修士論文、博士論文だろう。理系の卒研や修論は研究室の先生がテーマを決めることが多いが、これでは挑戦心は育たない。プランニングや課題設定の段階から経験できるようにすべきだ。

大学の先生は学生に知識を与えるだけでなく、人間力を伸ばすことをもっと考えてもらえないか。人と違うことをするのを恐れない胆力なども学問に取り組む中で高められると思う。

スキルの習得も否定しないが、学問を通じて体得した論理的思考力や方法論は汎用性が高い。換言すれば単に知識習得を目的とするのでなく、考える力を強化する教育が重要だ。例えば、私が学生時代に学んだプログラミング言語は今は役に立たないが、その基礎にあるアルゴリズムの理解があれば言語が世代交代しても議論についていける。

一方で、知識集約型社会ではより多くの若者が大学に進み、教育を受けられる環境をつくるべきだ。学問とスキルの比重は大学によって多様であってよい。

人材育成で産学官の連携が重要なことは産業界も強く認識している。産業界が果たすべき役割の一つは実践的な教育の提供だ。例えば、企業が持つリアルなデータはインターンシップや課題解決型学習(PBL)の題材として活用できる。

もう一つは博士人材の育成で大学と協力し合うことだ。専門で培った高い課題設定力や課題解決力を生かして、専門外の分野でも力を発揮できるのが本来の博士だ。大学はそういう筋肉質な博士を育て、企業は活躍の場をつくる。これを数年続ければ博士課程と企業の関係が変わっていく。

博士向けのインターンを増やし、人文・社会科学系にも広げるなど博士が持つ力を示す機会を創出していくべきではないだろうか。

(聞き手は中丸亮夫)