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地銀4グループが新規上場 脱・銀行へ攻めの転換

地方銀行グループ4社が3日、上場する。静岡、伊予、中国(岡山県)の3行が単独で、愛知・中京の2行は共同で持ち株会社を立ち上げる。

コンサルティング会社、証券会社などを傘下に、企業支援や資産運用で収益拡大を目指す。攻めに転じるため、銀行の殻を破り始めた。「昔は銀行だったね」。いずれ銀行単体の上場はなくなり、そんな声が出そうだ。

上場するのは静岡銀行を持つ「しずおかフィナンシャルグループ(FG)」、伊予銀の「いよぎんホールディングス(HD)」、中国銀の「ちゅうぎんFG」、愛知銀と中京銀の「あいちFG」だ。

「マイナス金利などの影響で、預金や資金の貸し出しといった伝統的なビジネスモデルだけで収益を上げるのは難しい」。静岡銀の柴田久頭取の語り口は率直だ。

新設するしずおかFGは、銀行とグループ会社が対等な兄弟関係を作るのが狙いだ。収益力の維持には銀行以外のビジネスを育てないといけない。自ら「銀行上位のヒエラルキー」を壊しに動いた。

いよぎんHDの社長に就く伊予銀の三好賢治頭取は「資本参加もしながら、より踏み込んだビジネス展開が大事になる」と話す。ちゅうぎんFGの社長に就く中国銀の加藤貞則頭取も「従来の銀行業にとらわれない新しい発想にもとづく商品・サービスの提供が必要だ」と強調する。持ち株会社への移行に向けてコンサル、投資、人材紹介を担う3社を新設。コンサル会社トップには、外資系コンサル会社の出身者を起用した。

有力地銀が一斉に持ち株会社に衣替えしている。2020年のひろぎんHD(広島銀行)を先頭に、21年10月に北国フィナンシャルホールディングス(石川県の北国銀行)、十六FG(岐阜県の十六銀行)などが続いた。今回も同様の流れで、事業のすそ野を銀行以外に広げようとしている。

流れを加速させたのは21年11月施行の改正銀行法だ。銀行による直接関与を制限できる持ち株会社化を条件に、他業参入規制を大きく緩和した。金融庁が「銀行業高度化等会社」として銀行とは別会社に認可する仕組みがその象徴だ。最大のポイントは「地方創生などの持続可能な社会の構築に資する」という審査基準にある。事実上、地銀の他業参入を全面解禁する意味を込めていた。

地銀再編もかつてのような救済型は影を潜め、脱・銀行を狙った協調型へシフトしている。愛知と中京両行は24年をメドに合併する。最大の狙いは「経営リソースの不足」(愛知銀の伊藤行記頭取)を補うことだ。「愛知銀行単独では、機会損失が発生している。お互いに持っているノウハウを融合し、収益に結びつけたい」。ナゴヤ金利と呼ばれるほど激しい低金利競争を繰り広げてきたが、消耗戦に限界が訪れている。

9月28日に同じ長野県の八十二銀行と経営統合を発表した長野銀行。シェア2番手の地銀が同一県内で再編するのも脱・銀行に向けて役割分担を考えた末の答えだ。

昔は銀行だった――。ホテルや百貨店、スーパーから、製造業など様々な業種の中堅・中小企業まで。新型コロナウイルス禍を経て地域を支える中核企業として、地銀が経営主体に出ざるを得ない場面も増えてくる。それに備え、一時的に企業の経営権を取得できるよう規制も緩和され、銀行が従来のように銀行業に座ったままでいられない事情も発生してくる。

地銀持ち株会社の数は10月、19社から23社に増える。直接上場する地銀が減る流れが加速しそうだ。10月に4グループが一斉に発足する動きは、いつか「上場地銀」がゼロになる日を予感させる。