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地球は奇跡の星でない? 「生命の兆候ある惑星」候補続々

地球はいくつもの偶然から生まれた奇跡の星――。かねて大気や水、適度な気温は幸運がもたらし、生命を育む地球は特別な惑星と考えるのがふつうだった。だが、別格だと言えたのは「これまで」だ。はるかかなたの宇宙を観測できるようになり、生命がいるかもしれない惑星は意外に多いと天文学者たちは気づいた。太陽系の外にある「第2の地球」はどのような姿なのか。生命の兆候をとらえる試みが始まっている。

 

太陽系にある8個の惑星のうち、生命が繁栄しているのは地球だけ。この事実が地球を特別な地位に押し上げてきた。熱や光を放つ太陽からほどよい距離にあり、暑くも寒くもない。この「ハビタブルゾーン」と呼ぶ領域にあるからこそ生命に欠かせない液体の水が存在し、生命が生まれた。

太陽のように熱や光を放出する中心の星(恒星)に近ければ熱すぎ、遠ければ寒すぎる。ほどよい距離にある幸運は、そう多くないはずだった。そんな見方を変えたのが観測技術の進歩だ。遠い宇宙に目を向けると、太陽とは別の恒星を取り巻くハビタブルゾーンに地球外生命が存在しうる「第2の地球」の候補が約20個も見つかった。

太陽系がある銀河だけでも100億個以上あるとされる。米航空宇宙局(NASA)の観測衛星TESSが探索を続け、今後10年でさらに20個ほど発見できる見通しだ。

 

 

 

TESSは、恒星の前を横切った惑星の影をとらえる。このトランジット法という手法で宇宙全体を視野を変えながら見渡し、2018年の打ち上げ以降、生命がすんでいそうな惑星の候補を見つけ出した。

日本やベルギーなどの国際研究チームは9月、ハビタブルゾーンの中にある地球サイズの惑星を地上の望遠鏡でとらえたと発表した。TESSが見つけた中では2個目で、地球からは約100光年先にある。

日本チームを率いる東京大学の成田憲保教授は「生命の兆候は遠い星ではみえない。地球から観測できる位置にあることが重要だ」と話す。

生命の手掛かりは大気の成分にある。惑星の大気を通過した光を分析すれば、光の吸収度合いから大気の成分がわかる。酸素があれば、光合成をする植物までもが存在する可能性があるという。酸素は生命に有害な紫外線を遮るオゾンを作り出すのに欠かせない。メタンの確認は、微生物などがすむ証拠になる。

惑星の地表が反射した光を分析する直接撮像法という手法を使えば、反射光の変化から光合成の有無がわかり、植物が生えているもう一つの証拠になる。

 

 

「陸には赤い植物が生い茂り、海には緑の海藻や細菌がいるかもしれない」。基礎生物学研究所の滝沢謙二特任准教授は予想する。

第2の地球は、地球でいえば太陽の位置に赤色わい星という種類の恒星がある確率が高い。地表には可視光よりも波長が長い赤外光が降り注ぐ。可視光を効率的に使える緑よりも、赤のほうが有利になるという。

赤外光は海中には届きにくく、逆に緑のほうが有利になる。海から陸に進化するなかで、緑から赤に変わっていくとみている。

地球のような陸がなく、海だけの惑星も想定される。「まだ想像の段階だが、巨大な浮草が進化して海面を覆っているかもしれない」(滝沢特任准教授)。酸素が少なければ、成長が遅くても腐らずに巨大になりうるとみている。

ハビタブルゾーンといっても、恒星からの距離だけで生命の有無を議論できるわけではない。光が届かないゾーン圏外の寒い惑星でも、温暖化ガスをなんらかの形で身につければ気温は上がる。惑星一つずつの大気の成分や恒星の年齢といった条件も関わる。

 

赤く輝く恒星の前を通過する惑星(黒い点)のイメージ=アストロバイオロジーセンター提供

赤く輝く恒星の前を通過する惑星(黒い点)のイメージ=アストロバイオロジーセンター提供

 

まだ観測技術は十分ではない。NASAが22年夏に観測を始めたジェームズウェッブ宇宙望遠鏡でも酸素や植物はみえない。

天文学者たちが期待を寄せるのは、ジェームズウェッブの後継機のほか、日米など5カ国が計画する世界最大級の望遠鏡TMTなどの次世代望遠鏡だ。第2の地球探しは夢物語ではなく、現実味を帯びてきた。そう遠くない将来、地球外生命を目撃する日が訪れるかもしれない。

(遠藤智之)