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近鉄百貨店、農業に参入 来年12月めど、自社栽培イチゴ販売 駅近に専門店出店も

大阪府内に農地を借り、2023年12月をめどに自社栽培したイチゴの販売を始める。近鉄沿線の生産者による野菜や果物を販売する売り場も百貨店内に増やし、将来的には駅付近で専門店の出店も視野に入れる。生産から販売までを自社で担い、利益率を上げる。26年2月期に売上高10億円を目指す。

23年2月期に大阪府南部の南河内地域に約6000平方メートルの農地を選定し、イチゴ栽培を始める。農業を手がける事業者と提携して生産設備や栽培システム、苗や肥料、梱包資材といった原材料などの提供を受ける。実際の栽培は近鉄百貨店の社員やアルバイトなどで行う方針。1パック250グラムあたり600~1500円ほどの中~高価格帯のイチゴを生産し、百貨店を中心に販売する予定だ。23年冬の出荷を目指し、初年度の売上高は1億円を見込む。

イチゴは1粒数千円から数万円程度の品種が開発されるなど、付加価値の高い農産物として注目されている。ケーキなどスイーツにもよく使われるためクリスマスなどの催事での需要も高く、「百貨店で販売するのに適した商材」(近鉄百貨店の担当者)だ。

近鉄百貨店が農業ビジネスに挑戦するのは初めて。事業者との協業のほかに9月から百貨店社員1人が大阪府主催の新規就農者向け講座に参加し、イチゴの栽培から販売までのノウハウを学ぶ。今後はメロンやシャインマスカットなど他の高付加価値の果物にも挑戦する方針だ。26年2月期までに売上高10億円を目指す。

近鉄百貨店の秋田拓士社長は「生産から販売といった川上から川下までを自社で担うことで卸などを間に挟まずに高収益を確保できる」と新規事業の狙いを語る。新型コロナウイルス禍で百貨店事業は苦戦が続く。今後インバウンド(訪日外国人)の回復などを見込むが、人口減など事業環境は厳しさが増す。

近鉄百貨店は店舗のほとんどを自社で所有せずに親会社の近鉄グループホールディングスから借りているため、テナント化を進めて賃料収入で稼ぐ不動産業を強みとする競合他社と比べて百貨店業に次ぐ事業が脆弱だ。「農業は百貨店の既存の販路を生かせる」(秋田社長)。本業の小売りと親和性の高い事業に活路を見いだす。農業の他に陸上養殖への参入も視野に入れているという。

鉄道会社の傘下という強みも生かす。近鉄沿線である奈良・三重県で生産された野菜や果物を販売する売り場「ハルチカマルシェ」を展開。あべのハルカス近鉄本店(大阪市)で21年10月に開始した売り場は22年7月末までに対予算65%増と好調に推移する。今後、同様の売り場を他の郊外店にも展開する方針だ。将来的には駅周辺などで農産物やデパ地下商品を売る専門店「都市型道の駅」の出店も検討する。