賃料収入というインカムゲインが得られ、インフレ対策として注目されるのが、不動産投資だ。
収益物件の情報サイト「健美家」を運営する倉内敬一さんは、「不動産や土地などの資産が手に入ることや、物件が値上がりすればキャピタルゲインを得られることも大きい」と、インフレ下でのメリットを語る。ローンを組んで投資すれば、少ない資金で効率的に収益を上げられる可能性もある。
ファイナンシャルアカデミー不動産投資スクール講師の束田光陽さんによると、「首都圏なら、アパート1棟丸ごとで表面利回り7~8%、1世帯マンションで同10%が一つの目標」。会社員が投資するのなら中古の区分マンションなどが取り組みやすいが、「そうした物件は7割が首都圏に集中している」(倉内さん)。それ以外のエリアでは、物件数が限られる。
値下がりリスクは小さい
足元の物件価格は横ばいで推移するという(下図)。しかし束田さんは、「ここ数年の不動産インフレを背景に新築物件の価格が上がったことで、中古物件の価格も上昇した。総じて物件価格の下落リスクが小さくなり、不動産投資のハードルが下がっている」と話す。
一方で、適切な購入のタイミングを計るのは難しい。「物件価格を主に左右するのは金利。ローンの金利が上昇すれば不動産投資の需要が減り、価格が下がる。今は金利上昇で、いつ物件価格が下がってもおかしくない状況」(倉内さん)。とはいえ、物件価格が低い時には、ローンの金利が高いというジレンマがある。「結局は、自分の生活環境や投資資金が整ったタイミングで始めるのが一番いい」と倉内さんはアドバイスする。
コロナ禍で需要に変化

物件選びで束田さんが薦めるのは、テレワーク対応の広めの区分マンション。「特に単身者向けに需要が高まっており、空室がすぐに埋まりやすい」(束田さん)
不動産投資に詳しいファイナンシャルプランナー(FP)の峰尾茂克さんも、テレワークに適した1LDKを薦める。
「ただし、駅から1㎞以上離れた物件や、築41年以上の旧耐震基準の物件は空室になりやすいので避けたい」(峰尾さん)
知っておきたいトラブル
「首都圏の物件価格が上昇したことから、比較的安価な老朽化した物件を慌てて買い、うまくいかず相談に来るケースが増えた」と峰尾さん。不動産投資を始めるなら、プランニングは重要だ。
「借り入れについては一長一短あるものの、安全重視なら借り入れなしが理想。空室のリスクを考えた方がいい」(峰尾さん)
最近多いのが、空室募集なども含めて一括管理してくれるサブリース会社とのトラブル。「家賃保証で毎月一定額の収入が得られる」とうたわれていても、実際は入居状況や家賃相場の下落で、賃料を減額できるようになっていることが多いからだ。
「他にも区分マンションでよくある例として、修繕積立金が充分に貯まっていないこともある。将来、予想外の出費がかかっても大丈夫なように、余裕のあるプランニングを心掛けたい」(峰尾さん)
出口戦略も重要 利回りは売却価格込みで考えよう

「諸経費や売却益を想定した利回りを一度計算しておくのがいい」(峰尾さん)
(大松佳代)

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