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独身の住まい、購入の条件 住み替えの可能性に目配り

だが、購入のタイミングや収入状況によっては、賃貸に住み続ければよかったと後悔する例も少なくない。持ち家と賃貸、それぞれのメリットとデメリットを比較し自分にあった住まいを選びたい。

 

金融機関に勤める20代の女性Aさんは、毎月支払う家賃がもったいないと感じて数年前にマンションを購入した。だが、貯蓄はなかなかたまらない。「転職を考えているが、一時的に収入が途絶えたり減ったりしても住宅ローンを支払い続けられるか不安」という。

持ち家購入の大きなリスクといえるのが、ライフプランの変化にあわせて住み替えにくいことだ。転職や失業で収入が減っても、賃貸住宅に住んでいれば家賃の安い物件に引っ越すといった対応もできる。一方、持ち家の場合はローンの残債があると簡単には対応できない。独身だと配偶者と協力できず、基本的に自力でやりくりする必要もある。

結婚すると持ち家が手狭になることもある。リクルートの「2021年首都圏新築マンション契約者動向調査」によると、単身世帯の約5割は50平方メートル未満のマンションに住む。4割超の間取りがワンルームか1LDKだ。

リクルートSUUMO副編集長の笠松美香氏は「マンション価格の高騰の影響で、10~20年前に比べると単身世帯の住む部屋も狭くなっている」と指摘する。仮に結婚して子どもが生まれると、引っ越しを余儀なくされる人が多そうだ。配偶者の通勤先や子どもの進学先に合わせて、立地も見直す必要がでてくるかもしれない。

転居したい場合、ローン残債があっても持ち家を売却することは一応できる。注意したいのはローン残債が売却価格を上回る場合。貯蓄で補えるなら問題ない。残債を返しきれないなら、現物件の残債と新物件のローンを合わせて借りる住み替えローンが選択肢となるが、一般の住宅ローンより借り入れ条件が厳しかったり金利が高かったりすることが多い。

ファイナンシャルプランナー(FP)の深田晶恵氏は「マンション価格は上昇傾向だが、将来の住宅価格について確かな予想は誰もできない。短期間で売却するのを前提に、安易に住宅を購入するのは避けたい」と助言する。

FPの井戸美枝氏も「特に今すぐ欲しい物件がなければ、転職や結婚、子育てといったライフプランの見通しがたつ35歳以降ぐらいの年齢までは賃貸に住んで、様子をみるのが一案」と話す。20代から30代前半は、当初はその気がなくても、突然の結婚や転職でライフプランが変わる相談者が多いという。年齢が高ければその分時間をかけて、資金もためやすい。

実際、リクルートの調査によると単身世帯の新築マンション契約時年齢の平均は約40歳と夫婦のみ(約34歳)や子どもがいる世帯(約38歳)と比べて高めだ。さらに、頭金など自己資金の比率も住宅購入価格の4分の1程度で、他の世帯に比べて多い。より堅実な資金計画をたてている人が多そうだ。

30代後半以上で将来のライフプランが固まっている独身者なら、家を買ってその利点を享受してもよいだろう。利点の一つが自分の資産となること。家賃を払い続けて資産が残らない賃貸との大きな違いだ。

長期的に考えると、老後も持ち家に住むなら、かかる費用が賃貸に比べ少なくなりやすい。賃貸は毎月の家賃の分、多めの老後資金を用意する必要がある。「リタイアした高齢者は現役世代に比べ、希望通りの条件で物件を借りにくい場合がある」(FPの久谷真理子氏)が、持ち家ならそうした心配もない。

独身者がマンションを購入する場合、何に注意すべきか。大事なのが自力でローンの返済を続けていけるように、計画をたて資金を準備することだ。井戸氏は「ローン返済額や管理費といった費用は今支払っている家賃を基準に考えるといい。毎月の費用が大幅に高くなりそうなら、頭金を多めに用意したい」と助言する。そのうえで「住宅ローン減税の利用や、将来の売却の可能性も考え、買い手が付きやすい50平方メートル以上の広めの物件を買うのがお勧め」という。

久谷氏は「急な病気や失業に備えた生活費の1年分程度の資金も手元に残しておきたい」と話す。貯蓄があれば収入が減ったり、売却価格が想定より安かったりした際のローン残債にも備えられる。

(勝莉菜乃)