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Web3 熱狂と不信4 苦渋の「さらばニッポン」

ブロックチェーン(分散型台帳)ゲーム開発のデジタル・エンターテインメント・アセット最高経営責任者(CEO)の吉田直人は、起業の地にシンガポールを選んだ理由をこう話す。

 

ボトルネックだったのが税制だ。Web3企業は事業のためにトークンを発行して投資家からお金を集める。日本ではその一部を手元に残しておくと、時価評価され、現金として持っていなくても課税される。

日本の投資家もシンガポールや中東のドバイなど海外に脱出する。ベンチャーキャピタル、アリーバスタジオCEOの佐藤崇は5月、シンガポールに移住した。「このままだと世界に追いつけなくなる」。シンガポールのオフィス街などには、Web3の起業家などが集う"日本人村"ができつつある。

「同じ失敗はできない」。自民党でWeb3関連のプロジェクトチームの座長を務める平将明は危機感を強めている。ブロックチェーンなどの分野で優れた頭脳が海外に流出すれば、SNS(交流サイト)などのWeb2.0と同様に世界に後れを取ってしまう。政府はトークンの含み益への課税を見直す検討を始めたが、本格的な議論はこれからだ。

海外にも規制を巡る動きはある。

米証券取引委員会(SEC)は8月、ヘッジファンドなどに暗号資産(仮想通貨)を含むデジタル資産の投資について、詳しい報告を求める規制強化案を公表した。「秩序ある市場をつくる」。SEC委員長のゲーリー・ゲンスラーは繰り返す。1990年代のインターネット政策と同じように、イノベーションを潰さずに政策を微修正しながら主導権を握ろうとしている。米国のようなしたたかさが、日本には足りない。

4月、米大手ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツの共同創業者ベン・ホロウィッツがひそかに来日した。伝説の投資家といわれるホロウィッツは、日本のWeb3企業に接触していたとみられる。気づいたときには日本が海外マネーの草刈り場になっていた――。そんな懸念もくすぶる。時間はない。

(敬称略)

 

フィンテックエディター 関口慶太、水口二季、湯浅兼輔、四方雅之、伴正春、北川開が担当しました。