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経済の長期停滞とデフレ(4) 「6重苦」などの構造問題 早稲田大学教授 上田晃三

少子高齢化は日本経済の大きな重しとなっています。働く世代が減少していけば、供給力が低下することになります。しかし、少子高齢化がデフレを招くのかという点については、実証的にも理論的にもコンセンサスは得られていません。特に、子供が少ないという少子化と、寿命が長くなるという高齢化を分けてみる必要があるでしょう。

少子化は、働き手を減らすことで供給を減らしインフレ要因になる一方、高齢化はデフレ圧力を醸成すると考えられます。一つの理由は、退職世代は名目でみた貯蓄額を所与とすれば、物価下落によって実質的な資産価値を増やすような政策を支持するためです。

また、2010年代には長期停滞の背景として、「6重苦」が挙げられていました。(1)円高(2)経済連携協定の遅れ(3)法人税高(4)労働市場の硬直性(5)環境規制(6)電力不足・電力コスト高――です。

その後、21年版経済財政白書は、6つの問題は全体として改善したと総括しました。円高は解消し、環太平洋経済連携協定(TPP)など経済連携協定も締結され、法人税率も引き下げられました。しかし、女性や高齢者の雇用は促進されているものの、労働市場の硬直性は依然残るとされています。また、新たな課題としてデジタル化の遅れが指摘されています。

物価を考えるうえでは、日本の流通構造についても理解が必要です。日本の流通構造は独特で、小売業の小規模稠密(ちゅうみつ)性と卸売業の多段階性が特徴であるとされます。

1990年代以降、外資系小売企業が本格的に日本市場に参入し始め、卸売りを介さないメーカーとの直接取引などを目指しました。しかし、商品調達などで苦戦し、日本からの撤退を余儀なくされる企業も多かったようです。小売・卸売企業とメーカーの関係性、また、最終的には消費者の選好の多様性は、日本のデフレになにがしかの影響をもたらしている可能性があります。