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米映画、東南アに娯楽施設 中間層・観光客に照準 ソニー、タイで来月開業 パラマウントは25年バリ島で

ソニーグループはタイのパタヤ近郊で、米パラマウント・ピクチャーズはインドネシアのバリ島で計画する。経済成長で増える中間層や外国人観光客の取り込みを狙い、米系大手が進出を決めた。もっとも、顧客争奪戦の激化やインフラ整備の遅れが懸念されるなか、思惑通りに進むかは未知数だ。

米ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)は15日、傘下の映画会社コロンビア・ピクチャーズの作品にちなんだテーマパーク「コロンビア・ピクチャーズ・アクアバース」を10月12日に開業すると発表した。場所は人気観光地のパタヤ近辺で、面積は約5万6000平方メートルと東京ドームを上回る大きさだ。2021年10月に開業予定だったが、新型コロナウイルス禍の影響などで遅延していた。

同施設はタイの施設開発会社アマゾンフォールズが運営する。人気作品「モンスター・ホテル」や「ゴーストバスターズ」などをテーマにした乗り物やプールを提供する。数年以内には現状の約3倍の16万平方メートルまで拡大する見通しで、仮想現実(VR)や仮想空間「メタバース」を生かした屋内型のアトラクションを設ける計画だ。

 

利益率高い事業

 

「ロケーションビジネスはあくまで実験。ソニーがディズニーワールドやユニバーサルスタジオをつくるわけではない」。こう語るのはSPEのアンソニー・ヴィンシクエラ会長兼最高経営責任者(CEO)。現状では米ディズニーと異なりテーマパーク運営までは乗り出さない。「保有するコンテンツをライセンスすることが目的だ。利益率も高い」としている。

ソニーグループは長期的な経営目標でエンタメ分野を中心に「10億人と直接つながる」を掲げている。人口が増えるアジア圏はその有望地域だ。今回の取り組みなどを検証し、同様のアトラクションを世界各地で展開できるかを判断する方針だ。

インドネシアの人気リゾート地のバリ島では10日、西部と中央部を結ぶ高速道路の起工式に米映画大手パラマウント・ピクチャーズの幹部の姿があった。同社は8月、観光・娯楽施設を手がける地場のキオス・リア・クレアシと提携してテーマパークを建設すると発表している。

テーマパークは57万平方メートルを確保し「東南アジア最大級」をうたう。25年の一部開業をめざす。パラマウント・ピクチャーズを傘下に持つパラマウント・グローバルのタイ・グラナロリ副社長は「バリ島の美しさにリゾートホテルとテーマパークを組み合わせた誇るべき計画だ」と語る。

パラマウントは「トップガン」や「ミッション・インポッシブル」など世界的なヒット作を数多く抱える。「スポンジ・ボブ」など低年齢層を対象にしたコンテンツも豊富だ。

これまでの娯楽施設は地場が営む小型なものが大半で、外資大手が乗り出す事例は少なかった。所得水準が先進国に比べて低く、投資案件として割に合わなかったからだ。ただ経済成長に伴い所得を増やし、レジャーを楽しむだけの余裕資金を持つ中間層が増え始めた。

 

国際通貨基金(IMF)によると、インドネシアの20年の1人当たりの国内総生産(GDP)は約3900ドルと10年前から2割超増えた。タイは足元7000ドル台で推移し、すでに上位中所得国の位置づけだ。

外国人観光客も主要ターゲットだ。ソニーとパラマウントは人気観光地の近隣にテーマパークを構える。コロナ禍が収束に向かい、リゾートに戻ってきた観光客の一定数を施設に呼び込めれば、その恩恵は大きい。

アジア全体で見ると、大型テーマパークは所得水準の上昇と連動するように開業してきた。たとえば、1983年開業の東京ディズニーランド。当時の日本の1人当たりGDPは約1万ドルだった。上海ディズニーが開業した16年の中国は同8000ドル台で、都市部なら1万ドルを超えていたとみられる。タイやインドネシアも、大都市に絞れば1万ドル近辺とみられ、過去の経験則を満たす。

 

顧客争奪が激化

 

もっとも、米系大手の思惑通りに進むかは見通せない。一つは、顧客の争奪戦激化だ。大型施設は近隣国から観光客を呼び込めるのが強みだが、逆に見れば奪われるリスクもある。代表例が05年開業の香港ディズニーランドだ。16年の上海ディズニーの登場で客足は遠のき、かねての低迷に追い打ちとなった。迎え撃つ既存のテーマパークが大規模改装などを打ち出せば、目算が狂う恐れはある。

インフラ整備を巡る懸念もある。たとえば、パラマウントのテーマパークに関し、周辺の高速道路の建設計画が遅れているとの報道が8月下旬にあった。地場企業でよく見られたように、大幅な延期や中止に見舞われる事態も否定できない。

世界でも数少ない成長地域であるアジアでは、今後も同様の大型施設が続く公算が大きい。競争に打ち勝つためには、規模だけでなく独自の魅力づくりが欠かせないといえそうだ。

(ジャカルタ=地曳航也、バンコク=井上航介、東京=古川慶一)