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【社説】地方に広がってきた地価の回復傾向

住宅地、商業地とも持ち直し、実体経済が新型コロナウイルス下から正常化への動きを映し出している。

とりわけ住宅地はバブル期の1991年以来、31年ぶりに上昇した。1月時点の公示地価はすでに上昇に転じていたが、調査地点が地方に多い基準地価の上昇は、地価の回復が地方に広がってきたことの表れといえるだろう。

といっても地方全体が上昇しているわけではない。まず「札仙広福」とよばれる札幌、仙台、広島、福岡の4都市とその周辺が上昇率を一段と高めた。札幌は北海道、福岡は九州とそれぞれの地域内から人を集め、再開発が進む。

これらの都市は実需に加え、割安で高収益が見込めると賃貸住宅やオフィスビルに投資マネーが流入し地価を支えている。札仙広福が都市機能や産業基盤を集積し拠点性を高めることは、過度の東京一極集中を是正するうえで重要だ。政策面でも後押ししたい。

地方の地価をさらにみると、札仙広福以外の県庁所在地でも上昇傾向の都市が増えている。中心部に高層マンションが建ち、高齢者が郊外から移り住んでいるところだ。人口が減る中、ある程度まとまって住むコンパクトシティー化が進むのは望ましい。地価の上がる街づくりを進めたい。

首都圏では、都心マンションの価格高騰が続く中でも、資産価値を重視する高所得層や投資家の取得意欲は旺盛だ。一方、在宅勤務の広がりで住居を見直す動きも強まり、神奈川、埼玉、千葉にも上昇地点が増えている。住宅地の二極化は都市行政や交通体系のあり方に影響する可能性がある。

商業地も、地元消費志向の高まりから郊外で地価が上昇する傾向が続いている。飲食需要の戻りが鈍い東京の銀座や大阪のミナミはまだ下落圏を抜け出せていない。今後のインバウンドの戻り具合が都心繁華街の地価動向を左右する要因になりそうだ。

東京のオフィス街は在宅勤務の普及で回復の足取りが重い。2023年には大型オフィスビルの開業が相次ぎ、賃料引き下げの圧力が強まろう。東京の不動産は低金利下で安定した収益を得られると海外の投資家に評価されてきた。投資マネーの動向を含め、変調の兆しがないか、注意が必要だ。