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発がん要因、トップは感染症 中川恵一

前回と前々回に書きましたが、野菜や果物によるがん予防に多くを期待することはできません。また、肉による悪影響もほとんどありません。

 

日本人男性の発がん原因の約24%が喫煙によるものです。喫煙に次いで重要なのが「感染」で18%を占めます。第3位が飲酒で8%です。

男性に比べて生活習慣が良好な女性の場合、発がん要因に占める喫煙や飲酒は4%前後にすぎません。女性の発がん要因の中でダントツの第1位は感染で15%を占めます。

男女合わせても、日本人の発がん要因のトップは感染で、17%を占めます。喫煙が第2位で15%、飲酒が第3位の6%となります。続いて、胃がんを増やす塩分過多が2%程度、食物繊維不足や過体重は1%程度で、受動喫煙は0.5%にすぎません。

日本人男性のがん罹患(りかん)の原因の43%、女性では25%(男女計36%)が、生活習慣やがんに関連する感染症など、予防可能なものです。

また、がん死亡の原因については、男性で50%、女性で27%(男女計41%)が予防可能です。

これまで日本人のがんの原因トップはたばこでしたが、喫煙率低下とともに、がんを誘発する感染症が発がん要因の1位となっています。

がん関連の感染症としては、胃がんの原因の98%を占めるピロリ菌、肝臓がんの原因の7割程度を占める肝炎ウイルス、子宮頸(けい)がんの原因のほぼ100%を占めるヒトパピローマウイルス(HPV)が重要です。母乳から感染して白血病の原因となるウイルス(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)もあります。

コロナは、忘れかけていた感染症の脅威を再認識させましたが、社会の衛生化とともに、世界的には感染が原因となるがんは減少しています。実際、欧米ではがん関連の感染症は、がんの原因の5%程度まで減っています。

日本でも、かつてがんの代表だった胃がんは、冷蔵庫の普及や上水道の整備などでピロリ菌の感染率が激減し、除菌治療も進んだため、死者は減少に転じています。

肝臓がんは、輸血用の血液から肝炎ウイルスを取り除いたり、注射器の使い回しをやめたりすることで、10年で死亡率が半分に減っています。

一方、一時減少していた子宮頸がんは2000年ごろより再び増加に転じています。本来減っていくはずの感染型のがんが増えるのは、先進国のなかでは異例の事態です。

検診率の低さの他、約9年にわたり「HPVワクチン」の「積極的な勧奨」が差し控えられた影響もあったと思います。一刻も早く対策を打つべき由々しき事態です。