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商業地上昇、海外勢けん引 足元では変調の指摘

シンガポール政府系投資ファンドのGICは2023年3月にかけて西武ホールディングスから「ザ・プリンスパークタワー東京」「苗場プリンスホテル」などを計1400億円強で取得する。香港ファンドのガウ・キャピタル・パートナーズも今後2年で最大5000億円強を投じる方針だ。

不動産サービス大手CBREが21年末に世界の投資家に意識調査したところ不動産の取得額が22年に「昨年より増加する」と答えた海外投資家の割合は74%に上り、国内投資家(54%)を上回った。

背景には日銀の超低金利政策がある。米連邦準備理事会(FRB)など各国の中央銀行はインフレ圧力を鎮めようと利上げを加速している。中央区など東京都心5区の大型オフィスビルの期待利回りと長期金利の差(イールドスプレッド)は米ニューヨークのマンハッタンや英ロンドンを逆転した。

期待利回りは日本を含めて低下傾向にあるが、円金利は低位を維持し、相対的に収益を上げやすい。ドルを元手に円を有利に調達しやすい環境も海外投資家の背を押す。

不動産投資信託(REIT)市況は底堅さを示す。日本のREITの総合的な値動きを示す東証REIT指数は3月末比で2%高。米REITは18%安に沈んでいる。岡三証券の並木幹郎シニアアナリストは「米REITから日本のREITに資金を移した投資家もいたとみられる」と指摘する。米コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)は2300億円をかけて日本のREITの運用会社を取得した。

ただ、足元で海外勢の動向に変調があるとの指摘もある。象徴するのが東京都千代田区の大型複合ビル「大手町プレイス」だ。政府保有分をこのほど、ヒューリックを中心とした日本の企業連合が国内最高額の4000億円ほどで落札した。「日銀が金融引き締めに転じるのではないかとの慎重論を映す」との声が専門家からは聞かれる。

23年に再開する都心部でのオフィスの大量供給も不安材料となる。ニッセイ基礎研究所は都心部のAクラスビルの空室率が26年に7%に達すると予想する。「余分な座席を確保する企業は減り、需要は力強さを欠く」(同研究所)としている。