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ミャンマー住宅分譲地3900万円 通貨急落、不動産で防衛

ミャンマー最大都市ヤンゴン近郊にある大手財閥ヨマ・グループの都市開発事業「スターシティー」で8月下旬、新たな戸建て分譲地「シティーヴィラ」の一般販売が始まった。235平方メートルの標準区画の分譲価格は、2階建ての住宅付きで5億7500万チャット(約3900万円)だという。

富裕層向け物件、売れ行きは好調

「当初は第1フェーズを販売する予定だったが、需要が多いので第2フェーズの一部の予約も受け付けている」。セールスギャラリーを訪ねると、営業スタッフがこう説明してくれた。家族連れや高齢夫婦などで説明ブースは満席だった。

ミャンマーの大卒初任給の目安は30万~50万チャットとされ、富裕層向けの高級物件といえる。だが、販売区画を示すボードを見ると、売り出し中の約90区画中8割程度が売約済みだった。得意先向けに先行販売した分を含むというが、売れ行きの好調さは間違いない。

スターシティーは高層コンドミニアムや高級住宅地などを組み合わせた複合不動産開発プロジェクトだ。専用の門や柵で囲われ、敷地内にはゴルフ場や公園などが整備されている。ヤンゴン中心部からやや離れており、2021年2月のクーデター以後は、市中の騒乱を避けて移住してくる家族連れ世帯も目立つ。

土地価格は「政変前の1.5~3倍に」

だが活況の理由はそれだけではない。「確実な資産として分譲地への関心が高まっている」(営業スタッフ)。クーデター前に1ドル=1330チャット前後だった現地通貨チャットは、市中両替商が提示するレートで同3500チャット前後まで下落した。

多額のチャットを持ち続けるのを避けるため、富裕層は不動産や金、中古車などを先を争って購入している。不動産業界関係者は「立地条件にもよるが、土地価格は政変前の1.5倍~3倍にあがった」と話す。

実需は追いついていない。新型コロナウイルスやクーデターで外国人駐在員が減り、郷里に帰るミャンマー人も増えた。不動産コンサルのCIMプロパティーコンサルタンツは「住宅の賃料は過去2年で20~30%下落した」と指摘する。市場が活況を呈しても、街のにぎわいが戻るにはまだ時間がかかりそうだ。

(ヤンゴン=新田裕一)