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「最後の逃げ場」は高配当株 守りの投資家、悲観広がる

インフレ退治のために世界の中央銀行が一斉に金融引き締めに走り、その終わりがいつになるかはいまだ不透明だ。長期にわたって株式相場が低迷するとみられるなか、医薬品などのディフェンシブ株には先行して資金が流入。しかしそこも割高感が強くなった。最後の頼みは、出遅れ感の強い高配当株だ。

 

ある国内運用会社のファンドマネジャーは、「守りの投資にシフトする中で、中長期にわたり減配リスクの少ない銘柄は株価の下落が限定的とみている」と話す。

日経平均株価が300円を超える大幅安となった16日の東京株式市場では、高配当株の逆行高が目立った。例えば高配当株の代表格であるメガバンク株はそろって上昇。予想配当利回りが6%超の日本たばこ産業(JT)も続伸した。

このファンドマネジャーは、どれだけ配当が安定して出せそうかをみる上で、株主資本に対する配当の割合を示す「株主資本配当率(DOE)」の目標を掲げているかどうかを重視していると明かす。純利益により配当額が変わる配当性向に比べて、経営環境の変化にかかわらず安定した配当が期待できるためだ。

16日にはこのDOE目標を設定する企業の株価も堅調だった。大林組とエクシオグループの株価はともに1%上昇。両社ともDOEを配当のメドとしており、配当利回りも4~5%と日経平均採用銘柄の全体の2.5%を上回っている。

なぜ投資マネーが高配当株に流れるのか。それは景気変動に左右されにくく、株価下落局面で選好されやすい医薬品や通信株が割高になり、パフォーマンスが落ちているためだ。

 

典型が第一三共だ。同社株は8月の1カ月間で19%上昇。株価急伸の結果、予想PER(株価収益率)は97.8倍まで切り上がった。しかし、上昇のペースは9月に入って鈍り、月間上昇率は1%に満たない。今週(12~16日)の騰落率でも、日経平均が2.3%安、日経平均業種別指数の医薬品は1.5%安と下落が大きくなった。

三井住友DSアセットマネジメントの上石卓矢シニアファンドマネージャーは、「相場の悲観が広がる中で先行して買われており、バリュエーション(投資尺度)でみて割高な銘柄も多くなった」と話す。今から守りを固めるために買いを入れても、その割高さゆえにかえって下落リスクが強くなっているという。

一方で、安定した収益が期待でき、まだそれほど買われていない「出遅れ高配当株」は投資家にとって「最後の逃げ場」だ。今週の日経平均は軟調だったが、高配当株を集めた「東証配当フォーカス100指数」は1.1%安と比較的底堅かった。

大和証券の阿部健児チーフストラテジストは「7月以降に増配を発表しても株価が十分に上昇せず、いまだに配当利回りが過去5年平均を上回る銘柄の株価は下げづらい」と話す。例えばこれに該当する住友林業の配当利回りは5.4%と、過去5年平均の2.8%を大きく上回る。

もっとも、こうした銘柄の多くは業績成長が鈍い。景気悪化懸念が強まる中で高配当株が消去法的に買われている現状は、できるだけ損失を出したくない投資家の苦肉の策といえそうだ。

(大西康平)