ともにメタバースへの入り口として使う仮想現実(VR)ゴーグルを来場者が体験できるようにした。普及への足がかりにしたい考えだが、価格の高さや対応ソフトの少なさなど課題も多い。
「画質が格段によくなっている。ゴーグルから振動が伝わってきて没入感がすごい」。開場の2時間前から並んでいた千葉市の男性は、2016年に発売した従来機からの進化に驚いていた。
男性が体験したのは、ソニーグループのゲーム子会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントのVRゴーグル「プレイステーション(PS)VR2」。家庭用ゲーム機「PS5」専用で、23年初めに発売が予定されている最新モデルだ。ソニーは企業ブースでの出展はしていないが、ソフト大手カプコンの展示ブースでホラーゲーム「バイオハザード ヴィレッジ」をPSVR2を装着して体験できるようにした。
画面に有機ELディスプレーを使い高精細の映像を表示するほか、本体を振動させゲームの臨場感を伝える。VRゴーグルを装着した状態でも、画面上に周囲の映像が映し出される「シースルービュー」機能も搭載した。
一方、メタは20年発売の「メタクエスト2」を出展した。体験できる個室をいくつも設け多くの来場者の目を引いていた。東京ゲームショウではリアル会場での出展は初めて。
パソコンと接続しなくても、Wi-Fiなどでインターネットに接続してアプリを直接ダウンロードできる。国内の販売台数は非公表だが「日本は最も販売が好調な国の一つ」(国内のVR事業のマーケティングを統括する上田俊輔氏)という。
両社ともにVRゴーグルを使ったメタバースが、今後のゲーム市場をけん引すると期待する。だが、普及への課題は多い。本体の重さや長時間装着すると目まいがするといった使い勝手のほか、価格の高さがネックとなっている。
メタは8月、メタクエスト2を2万円以上値上げし、最安モデルでも約6万円となった。普及を目指し価格を抑えてきたが、世界的な物価高や円安などへの対応を迫られた。メタの上田氏は「手ごろな価格帯だ」と強調する。だが、国内の家電やIT機器の実売データ「BCNランキング」によると、8割程度とされていたメタクエスト2のシェアは値上げ後に4割程度に急落した。
ソニーのPSVR2の価格は未発表だが、従来機の発売時の価格は約5万円だった。PS5の本体は約6万円。本体との合計金額を考えると負担は小さくない。
東洋証券の安田秀樹シニアアナリストは「そもそもVRに向いているゲームのジャンルは限られており普及は容易ではない」とみる。発売から2年を経たメタクエスト2でも、対応ソフトのタイトル数は国内で250本程度。「開発者をどう増やすかが課題だ」(メタ関係者)という。
スクウェア・エニックス・ホールディングスの松田洋祐社長は「(開発を)考えているチームはある」と明かす。セガの杉野行雄社長も「対応ゲーム開発は前向きに検討している」と語る。どれだけ多くの魅力的なソフトが登場するかが、普及を大きく左右しそうだ。

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