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新人映像コンテストに新風

まずフォーマットから新時代を感じさせるのが、「TikTok TOHO Film Festival」(以下、TTFF)だ。動画プラットフォーム「TikTok」と東宝が組んで2021年にスタートした映画祭で、特徴は「縦型動画」に特化した点。「#TT映画祭」と付けてTikTokに投稿するだけで応募可能という手軽さもウケ、第1回は5000作以上の応募があった。「想像以上の投稿数があり、またジャンルの広さやクオリティーの高さにも驚きました」(TikTokの島袋佳子氏)

第1回のグランプリは、武蔵野美術大学大学院生の吉川啓太氏による1分×10話の作品「トラベルノート」。吉川氏は賞金30万円と、450万円相当の映像制作サポートとともに浜辺美波主演の縦型短編映画の制作権を獲得。受賞から3カ月後には浜辺主演の「夏、ふたり」を公開して話題になった。

 

2022年8月に行われたTikTok TOHO Film Festivalの第2回授賞式。中央がグランプリに輝いた山口景伍監督

2022年8月に行われたTikTok TOHO Film Festivalの第2回授賞式。中央がグランプリに輝いた山口景伍監督

今年の第2回では、同じく武蔵野美大在学中の山口景伍監督による「僕の妹は螺旋(らせん)階段が大好きだ。」がグランプリに。「尺が1分と短いながらも、想像を膨らませる内容で、審査員のみなさんが『何度も見てしまう』と絶賛。螺旋階段を舞台に縦のアングルをうまく活用されている点も評価されたポイントでした」(島袋氏)。山口監督は昨年のアンバサダーである北村匠海と東宝のプロデュースのもと、前回同様のサポートを受け、福本莉子主演短編の監督に挑む。

「8月にNHKで放送された『セイコグラム』のように、最近はオンライン上のみならずテレビでも縦型ドラマが増え、将来はテレビや映画館のスクリーンも縦型になる可能性がある。TTFF出身のクリエイターは、その先駆者。国内外を問わず活躍していただき、映像業界に新風を吹き込んでいただきたいです」(島袋氏)

 

HU35では、最終選考に残った5人は制作費1500万円の支援を受け、自身の企画の監督・脚本を務め映像化する機会を与えられる (C)2022 HJ Holdings, Inc.

HU35では、最終選考に残った5人は制作費1500万円の支援を受け、自身の企画の監督・脚本を務め映像化する機会を与えられる
(C)2022 HJ Holdings, Inc.

候補者に潤沢な制作費とスタッフを提供し、育成の側面も強く打ち出すのが「Hulu U35クリエイターズ・チャレンジ」(以下、HU35)だ。Huluが、日本上陸10周年を記念して昨年始めたプロジェクトで、応募資格は35歳以下。40分以内の実写作品の企画を募集し、ファイナリスト5人に選ばれると、プロの映像制作チームのサポートを受けて監督できる。

「今はスマホで簡単に動画が撮れ、映像発信は誰でもできる時代。だからこそ、不特定多数の人に広く見てもらえる作品を作るのは難しい。募集条件の敷居を下げてより多くの人に参加してもらいつつ、ファイナリストにはプロのスタッフの下での制作を経験してもらうことで、将来が有望な才能を発掘したい」と、HU35企画プロデューサーの黒木彩梨氏は話す。

初年度の1本あたりの制作費は1000万円。ドラマやバラエティーのディレクターとして活躍する男性3人と、23歳の女性AD、そして映像制作未経験の19歳の女子大学生が40分の作品を撮り上げ、ADの老山綾乃氏が監督した『まんたろうのラジオ体操』がグランプリを受賞。老山氏は賞金100万円と「Huluオリジナル」の新作を監督・配信できる権利を獲得し、現在、新作に挑んでいる。

第2回は、制作費が1本1500万円に増額された。「第1回のファイナリストには、脚本の打ち合わせや撮影が初めての方もいて、ケアには時間と労力がかかることが分かりました。増額分の500万円×5本分は少ない額ではありませんが、HU35出身のクリエイターのみなさんが世界に羽ばたいて、Hulu作品を撮りに戻ってきていただけたら」(黒木氏)

このほか、KADOKAWAの「日本ホラー映画大賞」や、アクション監督団体の「アクション映画監督新人発掘プロジェクト」などユニークなコンテストも増加中。それぞれの持ち味を生かした発掘・育成に力を入れる。

(日経エンタテインメント!10月号を再構成 文 泊 貴洋)